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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が編集、翻訳したものです。

 2019年5月2日、ベライゾン・コミュニケーションズの年次総会で、初めてインターネット上での児童の性的搾取等に関する株主提案が採決された。株主提案では取締役会に対し、2020年3月までに同社の製品やサービスを通じて12児童に対する性的搾取等が行われる可能性(リスク評価も含む)について報告するよう求めた。そのための対応コストは妥当な範囲に抑え、機密情報または秘密情報を除外した上で、同社のブランドの評判、製品需要またはソーシャルライセンスに重大な影響が及ばないようにするための監督体制、方針および業務慣行が十分であるかどうか評価するとした(※)。

 このテーマの株主提案はこれまで3回提出されており、ベライゾンのケースはその1つである。その他、2018年8月にはキリスト教徒投資サービス(Christian Brothers Investment Services、以下CBIS)が、アップルに対して同様の株主提案を提出している。アップル社のケースでは、会社側がこの問題への対応の強化と評価基準の策定を約束したことから、議案は取り下げられた。また、米国の携帯電話事業者であるスプリントの株主が提出した議案は、2019年8月に採決にかけられる予定であるが、会社側は反応を示していない。 

 2018年、非営利団体である全米失踪・被搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Children以下、NCMEC)が通報を受けた児童ポルノ画像およびビデオは4,500万件を超え(前年から倍増)、そのほぼ全てが12のインターネット運営会社からの通報であった。この問題は大きな関心を集める社会課題であることは明らかだが、同時にICTセクターでも懸念が強まりつつある。ICT企業の成長を牽引するテクノロジーは、インターネット上での児童の性的搾取等の拡大に拍車をかける可能性があるからだ。

 ICT企業は幅広い投資家のポートフォリオに組み入れられる一方、インターネット上での児童の性的搾取等の急増という課題に直面している。こうした性的犯罪に使われるのはスマートフォンからゲーム機、アプリ、テキストメッセージ、ソーシャルメディアのサイト、クラウド・ストレージ製品に至る多様なユビキタス・テクノロジーである。しかし、ICT企業はこうしたリスクの対策内容(児童ポルノ画像の特定・ブロッキングや悪用者の先を行く新たなソリューションへの投資など)をほとんど開示していない。

 CBISは企業の説明責任をより明確にするため、2017年から児童福祉団体と連携して、インターネット上での児童の性的搾取等を(法律および個人のプライバシーの権利の範囲内で)特定・停止するよう求めている。米国の法律は、一部のICT企業に児童の性的搾取等を見つけ次第、通報するよう義務づけているが、積極的な探知は義務づけていない。米国以外では、英国がインターネット上の有害コンテンツ(児童の性的搾取等に当たるものを含む)を取り締まるための法案を提出している。英国内務大臣は、児童の性的搾取等の有害なコンテンツを削除するだけで、踏み込んだ対策を講じていないICT企業を厳しく取り締まるとも述べている。ニュージーランド政府はソーシャルメディアの運営会社と協力して、アクセス可能な有害コンテンツを取り締まることを発表した。

 問題はどれほど深刻なのだろうか。インターポール(国際刑事警察機構)の集計によると、世界に拡散している固有の児童ポルノ画像は1995年には約4,000件であったが、国連薬物犯罪事務所の推計では今や毎年少なくとも5万件の画像が新たにインターネット上に掲載されている。さらに、以下のような事実も明らかになっている。

 ・  Internet Watch Foundationによると、2017年に通報された児童ポルノ画像の55%は10歳以下の児童のもので、性的虐待を示す画像を掲載しているサイトのドメインネーム数は、2016年から2017年にかけて57%増加した

・  「行方不明者および搾取された子供たちのためのセンター」によると、電子サービスプロバイダーに送られた、児童ポルノ画像を掲載した疑いのある公開ウェブサイトに関する通告は16万件を超えている

・  非営利団体のThornによると、未成年の少女を使った売春斡旋の75%はインターネット上で行われている

 オランダの投資運用会社Robecoやデンマークの年金基金PBUなど、この課題に注目しCBISに賛同する投資家も現れている。では、投資家は何ができるのだろうか。CBISは、5ヵ国の児童保護の専門家と投資家から成るチームを立ち上げ、「オンラインでの児童の性的搾取対策に期待される技術(Tech Expectations for Combating Child Sex Exploitation Online)」というガイダンスの策定を目指している。2019年内には公表し、ICT企業がインターネット上の性犯罪から子供を守るために実践すべき取組みや方針を評価する際のベンチマークとして用いるほか、投資家による投資先のICT企業とのエンゲージメントへの活用が期待される。またガイダンスでは、企業に以下のコミットメントを求める。

・  顧客、ソフトウェア開発業者、サードパーティ向けの「サービス利用規約」(ユーザー規約)で確固たる方針を示し、規約の監視と施行に関する明確な説明と、ユーザーがインターネット上での児童の性的搾取等を見つけた際の通報の仕方も明記する

・  児童保護団体との連携を強化し、常に最新の動向やリスクを把握する

・  社内にオンラインセーフティチームを設け、自社のシステム、製品およびビジネスモデルに違法/危険なコンテンツがないかどうかチームメンバーが積極的に監視し、拡大するリスクの常に一歩先を行くためのイノベーションの手法を見つけ出す

・  性的虐待に当たる画像の特定、追跡または停止を可能にするソフトウェアまたはツールを備える

・  コンテンツおよびベアレンタル・コントロールを強化し、親だけに責任を負わせるのではなくテクノロジーの知識を持つ企業と最新の動きを把握する任務を負う者で負担を共有する体制へと移行する

・  ユーザー教育やソーシャルメディアのほか、両親、子供および教育者向けトレーニングでインターネットのリスクや子供をインターネット上の性犯罪から守るためのベストプラクティスを紹介する

 

ベライゾン社公式サイトによると、5月2日の株主総会において本件株主提案は他の4件の株主提案とともに否決された

 


 

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【参照】

Responsible Investor, Tracey Rembert 「Child sexual exploitation online - a growing risk for the technology sector」2019年5月2日 (2019年5月23日情報取得)

※筆者であるTracey C. Rembertは、CBISのCatholic Responsible Investingディレクターを務める

Verizon Communications Inc., Verizon reports results of preliminary shareholder vote at 2019 annual meeting, 2019年5月2日

 


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