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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

  日本の機関投資家が、米国のカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)およびカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)の主導のもと、「Climate Action 100+イニシアチブ (以下、CA100+)」でエンゲージメント対象となっている国内の企業との対話を開始する。エンゲージメント対象はダイキン工業、日立製作所、本田技研工業、日本製鉄、日産自動車、パナソニック、スズキ、トヨタ自動車、東レ、JXTGホールディングスの10社である。

 CA100+は、世界の機関投資家が協働し、温室効果ガス排出量の多い企業に気候変動関連の情報開示と対応を求めるイニシアチブで、2017年に発足した。日本では、運用機関7社が署名しており(日興アセットマネジメント、三井住友信託銀行、アセットマネジメントOne、三菱UFJフィナンシャル・グループ、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント、りそな銀行、富国生命投資顧問)、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もサポーターとして参加している。レスポンシブルインベスター(以下、RI)の取材に対して関係者は、「CA100+の発足後、日本では国内固有の複雑な規制や企業文化が障害となり活動は停滞していた。今回、同イニシアチブは初めて存在感を示すことになる」と語った。

 CA100+の署名機関投資家は、2019年4月、日興アセットマネジメントの東京オフィスでの初会合を開催した。会合には、日本での活動を支援するPRIジャパンおよび気候変動に関するアジア太平洋地域の投資家団体であるAIGCCの代表者も同席した。署名機関投資家の1社はRIに対し、「エンゲージメントプロセスは極めて初期段階にある」と明かした。これは、イニシアチブに参加する日本の機関投資家が一部の海外勢に大きく後れを取っていることを示している。海外の署名機関投資家の中には、シェルに温室効果ガス排出量の短期的な削減目標と経営幹部の報酬を連動させることを約束させるなど、成果を上げている。

 2017年5月、日本版スチュワードシップ・コードの改訂版が公表された。その中には、重要な改訂項目の一つとして、複数の機関投資家が協働して企業と対話を行う集団的エンゲージメントが盛り込まれた。この背景には金融庁が、集団的エンゲージメントが機関投資家にとって「有益な場合もありうる」と位置づけ、「必要に応じて」導入するよう促したことがある。日本版スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードは、日本における投資家と企業の対話(より広く捉えればESG)に変革をもたらしてきたと広く認識されている。一方コードには、発行済み株式数の5%を保有する投資家が協働して投資先企業の役員に「重要な提案」を行ったり、共同して株主としての議決権を行使したりする場合には、報告する義務があることも定められている[1]。「重要な提案」の定義が明らかでなく、個別の案件が重要な提案に当たるかどうか、アセットマネジャーが金融庁に直接問い合わせることも多い。今回、海外と国内の投資家が協働する背景には、海外の機関投資家が持つエンゲージメント活動の実績と、国内機関投資家が熟知する日本の市場と企業文化を結びつける目的がある。AIGCCは、こうした枠組みはアジア全域でCA100+イニシアチブを展開する上で戦略の要になるとしている。AIGCCのディレクターを務めるレベッカ・ミクラ・ライト(Rebecca Mikula-Wright)氏はRIの取材に、「日本市場の既存の枠組みやエンゲージメントのレベルを理解し、全てのステークホルダーに働きかけることが必要だ。そうすれば、やみくもに市場に参入することも、やり方を間違えることも、そしてドアを閉ざされることもなく、逆効果にならなくて済む」と答えた。

 CalPERSは日本のアセットマネジャー4社と協働し、日本企業6社に対するエンゲージメントを主導する。CalSTRSはアセットマネジャー4社と共に、日本企業4社を対象にエンゲージメントを行う。CA100+は、各エンゲージメントのリードインベスターや対象の企業名、目的を明らかにしない方針を掲げている。これに対しては、NGOグループがCA100+に説明責任の拡充を求める動きもある。レベッカ氏は「エンゲージメント活動が企業にとって前向きな活動につながることを望んでいる。このイニシアチブでは名前を公表するつもりはない。投資家は、対象企業の温室効果ガス排出量の削減と長期リターンを追求している。企業もおそらくそれを望んでいるはずだ」と述べる。

[1] 日本版スチュワードシップ・コードの策定を踏まえた法的論点に係る考え方の整理(金融庁)


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【参照】
Responsible Investor, Ella Milburn「Japanese investors team up with CalPERS and CalSTRS on Climate Action 100+ engagement」2019年4月12日(2019年4月24日情報取得)

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