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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。
 

 2019年2月、大手格付け機関のS&Pグローバル・レーティングが、同社の信用格付けレポートに「ESG」評価セクションを追加すると発表した。

 従来、信用格付け機関は長期的なリスクエクスポージャーに対処せず、短期志向への傾倒を強めているとして非難されてきた。格付け機関が3~5年間程度の発行体の信用力を重視するということは、多くの格付けが気候変動要因を考慮していないことを意味しており、発行体による気候変動リスクへの対応を妨げているとの見方もある。

 ESGへの考慮を求める投資家や政策立案者に対し、格付け機関は自らの使命は債券の平均保有期間におけるデフォルトリスクを明らかにすることであり、系統的なサステナビリティ(持続可能性)の課題に取り組むことではないとしてきた。また、そうした要望に対してはESG分析やグリーンボンド評価など新規サービスの提供によって応じてきたとする。

 しかし、この度初めてS&Pが「トップティア」、つまり債務履行レベルが最も高く、かつ規模の大きな上場企業の信用格付けレポートに「ESG」評価セクションを追加すると決定。今後は、ESG要素が財務上重要な影響を及ぼしていると判断される「セカンドティア」の企業にも展開していくという。

  対象となる発行体企業数は約2,000社にのぼり、これはS&Pが評価する企業ユニバースの約40%に相当する。同社のSustainable Finance責任者であるマイケル・ウィルキンス氏は、「当社は、発行体のキャッシュフローや収益性または債務などに影響を与える可能性のあるESGのリスクエクスポージャーに注目している。特に、どの程度そのリスクエクスポージャーが深刻なのか、それをもとに問題が発生する可能性は高いのか、などについてだ。同業他社との比較も示す」と述べた。

  国連責任投資原則(PRI)で信用格付けイニシアチブの指揮を取るカルメン・ヌッツォ氏は、「S&Pの積極性と格付け分析における透明性の向上への取り組みを歓迎する」と語る。

  また、S&Pが「ESG」評価セクションを追加した背景として、ウィルキンス氏は「当社は発行体に新たな情報開示を求めているのではない。当社が信用格付けにESG要素を反映していることを明確に示し、当社のレポートを利用する人にその詳細を分かりやすく伝えたかったのだ」とする。欧州委員会が欧州証券市場監督局(ESMA、欧州連合において信用格付け機関の規制を担う機関)に対しサステナビリティへの取り組み強化を求めたことを「意識」した面もあるが、「ESG」評価セクション導入の決め手となったのは、投資家の要請によるものが大きいと強調。今後は事業債だけでなく、金融機関や公的機関などの発行体についても同様の対応を進めるとしている。


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【参照】
Responsible Investor, Sophie Robinson-Tillett「What’s behind S&P’s new ESG section in corporate credit ratings?」2019年2月13日(2019年3月18日情報取得)


QUICK ESG研究所