画像

 2018年6月、オランダの資産運用会社であるPGGM*のチーフ・インベストメント・マネージャー、エロイ・リンダイヤ(Eloy Lindeijer)氏は、国際環境NGOのグリンピースからオイルサンドの輸送パイプラインを建設する企業に投資しているという指摘を受けたことに対し、同社の見解をホームページに公表した。

 レスポンシブル・インベスターによると、グリンピースはPGGMの他、オランダの公務員年金基金であるABP、大手保険会社であるエイゴンおよびナショナーレ・ネーデルランデンを「汚れた4社(Dirty four)」と称し、投資の引き揚げを要請した。オイルサンドはその生産過程で多量のCO2を排出し、また輸送用パイプラインの建設は先住民族の権利を侵害するなど環境や社会への悪影響が懸念される。グリンピースは、「PGGMは、(大手エネルギー会社でありパイプラインの建設に携わる)米国のエンブリッジ、エネルギー・トランスファー・パートナーズおよびカナダのトランスカナダの株式を保有している。これはPGGM自身が支持するパリ協定に反する」と批判した。

 リンダイヤ氏は、「PGGMは年金基金を運用する機関投資家として、環境NGOが望む株式売却とは違う手段でパリ協定の遵守に取組んでいる」と述べる。2015年11月、同社は2020年までに投資先企業のCO2排出量を半減させる(2014年対比、売上高原単位ベース)目標を掲げている。責任投資レポート(Annual Responsible Investment Report 2017)によると、2017年末時点で投資ポートフォリオのカーボンフットプリント削減率は28%に達している。また、エネルギー効率の高い日本の物流センター建設プロジェクトへの投資など、Co2排出量の削減に寄与する企業へのこの2年間の累計投資総額は64億ユーロ(約8,300億円)に達している。

 同氏は、「NGOから特定の投資銘柄に対する指摘を受ける機会は少なくない。年金基金として持続可能性を考慮しつつリターンを追求することが当社の目的であって、全ての指摘事項に対応するわけではない。今回指摘を受けた3社の投資額は66億ユーロ(2017年末時点のレートで、約8,700億円)であり、運用総資産総額に占める割合はわずか0.03%である。ではなぜ売却しないのか。それは、幅広いグローバル銘柄を運用するパッシブ投資家として、リスクや管理コストを最小にするためである。同時に、投資先企業との継続的な対話(エンゲージメント)にも注力している。PGGMはエンブリッジ、エネルギー・トランスファー・パートナーズおよびトランスカナダとのエンゲージメントを実施し、低炭素社会に向けた取組みを推奨している」と説明する。また、「株式の売却のみでは世界全体で問題は解決しない。(たとえPGGMが指摘をうけた株式を売却したとしても)結局は持続可能性に関する企業とのエンゲージメントの経験がない、またはその意向のない別の投資家が株式を所有することになるだろう」と指摘する。

 

*資産総額1,970億ユーロ(約25兆円)にのぼる、オランダの医療系労働者向け職域年金基金であるPensioenfonds Zorg en Welzijn(PFZW)の運用を担う機関

 

【参照】
PGGM 「Tar sand transport sector also deserves a sound shareholder dialogue」2018年6月21日(2018年7月3日情報取得)
PGGM「Annual Responsible Investment Report 2017」(2018年7月3日情報取得)

【関連記事】
QUICK ESG研究所「【オランダ】年金基金のPFZW、2020年までに投資ポートフォリオのCO2排出量を半減へ」2015年12月9日


QUICK ESG研究所 小松 奈緒美