強制労働のイメージ

 2017年10月17日、国連移住機構(UN International Organization for Migration: IOM)と責任ある企業同盟*(Responsible Business Alliance: RBA)は倫理的雇用促進と移民労働者保護を目的とした連携を強化するための覚書(Memorandum of Understanding: MOU)を締結した。 

 現在、世界では約2,500万人もの人々が強制労働を強いられているといわれる。とりわけ移民労働者はその立場の弱さから、高額な採用手数料の要求、拘束、複雑化した採用プロセス、結果的におしつけられる不透明な労働条件、不十分な法的保護の下で働いており、このような状況が強制労働の根本原因と考えられている。 

 2017年7月、RBAは強制労働撲滅を目的に「責任ある労働イニシアチブ(Responsible Labor initiative: RLI)」を設立した。このイニシアチブは、グローバルサプライチェーンを通じて雇用市場から強制労働を削減するために、幅広い業種およびステークホルダーからの参加を募り、共同でデューデリジェンスの適用や影響力の行使を呼びかけている。

 IOMは、移民労働者の倫理的雇用支援のため、他のステークホルダーと共に人材紹介・斡旋業者の認証システム「国際雇用保全システム(International Recruitment Integrity System: IRIS)」を開発した。IRISは雇用主が人材紹介・斡旋業者を評価するためのデューデリジェンスや、人材紹介・斡旋業者が自社の倫理的雇用に対するコミットメントを外部に提示するツールとして活用されている[1]

 今回、MOUを締結したことで、両機関は専門知識や国際的なネットワークを活用した情報共有により、共通目標の達成にむけて公式に協力することになる。この中には、RLIとIRISの目的と技術面での整合性を図り、研修やキャパシティ・ビルディングなどのプロジェクトに共同で取組むことが含まれる。

 IOMのマリーナ・マンケ氏(労働移動および人材育成部門長)は「多くの場合、移民労働者は、採用段階で搾取ともいえる高額な職業紹介・斡旋費用を要求されたり、誤った雇用条件を伝えられたりしている。政府、市民社会、そして企業が共同で移民労働者の搾取問題に取組むことが喫緊の課題である」と述べた。

 RBAのロブ・レダラー氏(エグゼクティブ・ディレクター)は「IOMとRBAが倫理的雇用分野において互いの強みを活かし、補完しあうことで、グローバルサプライチェーン全体で強制労働撲滅に取組める」と語った。

 

*RBA(旧EICC)は、アップル、アマゾンをはじめとする、大手電子機器・IT企業110社(2017年10月現在)によって構成される国際NGOである。メンバー企業はグローバルな電子機器サプライチェーンにおける、労働環境の安全性と環境への配慮、倫理的な職場環境を保全するための行動規範の遵守が求められる。メンバー企業の年間の売上総額は47兆円、従業員総数は600万人である。日本企業では、コニカミノルタ、ソニー、富士通、東芝、東京エレクトロンが加盟している。

 


【関連資料】
Responsible Business Alliance:RBA(2017年11月21日情報取得)
RBA「UN Migration Agency and Responsible Business Alliance Sign Agreement to Combat Forced Labor and Exploitation」(2017年11月21日情報取得)
[1] IOM「IRIS」(2017年11月21日情報取得)

※2017年11月22日 リンクの表記を一部修正しました。


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美