ニューヨーク市の自然のイメージ

 2017年10月3日、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は、パリ協定で採択された目標「産業革命前からの地球平均気温上昇を1.5℃に抑える努力を追及する」を実現すべく、都市としては世界初の取組み計画「1.5°C: Aligning New York City With the Paris Climate Agreement」を公表した。

 トランプ大統領が米国のパリ協定離脱を発表した翌日、デブラシオ市長は、パリ協定を遵守する旨の執行命令(Executive Order 26)を下した。本計画はこの執行命令に則り、ニューヨーク市の気候変動問題に対する今後3年間の取組みを明記している。

 2014年、ニューヨーク市は「80×50プラン」を公表し、2050年までに温室効果ガスを80%削減(2005年比)することをコミットした。また、2017年9月には建築物から排出される温室効果ガス削減のため、条例化を推進すると宣言した。ここでは、面積が25,000sq.ft(約2,300㎡)以上の大型建築物を対象に、2030年および2035年までに達成することを義務付けるエネルギー使用量の上限規制を敷くことが予定されている[1]。今回公表された計画では、2020年までにエネルギー、運輸・交通、建築物、廃棄物処理の各分野での取組みに優先順位を付け、「80×50プラン」の実行ペースをさらに加速させようとしている。

 今回公表された主な取組み計画は、以下のとおりである。 

  • エネルギー:十分な電力を確保でき次第、自治体運営を100%再生可能電力で賄う。2017年の秋からは公共施設向けのソーラープロジェクト、計50件に着手する。このプロジェクトにより、目標「2025年までに公共施設に必要な電力のうち100MW(メガワット)を太陽光発電による電力で賄う」の1/4を達成できる
  • 運輸・交通:ニューヨーク市内の5つの区(マンハッタン区、ブルックリン区、クイーンズ区、ブロンクス区、スタテンアイランド区)で、電気自動車用高速充電施設の設置など電気自動車用の設備を拡張し、2025年までに新車登録の20%を電気自動車にする。また、地下鉄網を補完するためのバスサービス(セレクト・バス・サービス*)の促進、富裕層への課税強化による地下鉄網の近代化を目指す。加えて、自転車専用道路を増設することで、2020年までに自転車利用者数を倍増させる
  • 建築物:大型建築物が対象となるエネルギー使用量制限の条例化に向けた取組みに加え、2019年には、それ以降新たに建設される大型建築物を対象とした、より厳しいエネルギー規制を制定する
  • 廃棄物処理:埋め立て処理されるごみを削減するため、有機廃棄物の分別・リサイクルを促進し、2018年までに有機廃棄物専用の回収ボックスの設置箇所を増大する

  デブラシオ市長は「大きな問題には、それ相応の対策が必要になる。ニューヨーク市は、パリ協定で締結された野心的な目標を達成するため、すでに懸命に取組んでいる。トランプ政権下においては、各都市がリードして気候変動問題と戦わなければならない。年々厳しくなる夏や、激しさを増す暴風雨は、沿岸都市に住む我々にとって、今ここにある脅威であり、行動を起こすべき問題なのだ」と述べた。

 

*セレクト・バス・サービス(Select Bus Service、SBS):環境への配慮や道路混雑緩和のため、地下鉄網を補完する目的で導入された制度のこと。SBS専用のバスレーン、乗車前清算、ルート内にあるすべての停留所に停車するのではなく、指定された停留所のみに停車する点が主な特徴である

【参考】
[1] デイリーニューズ「De Blasio promises to force landlords reduce greenhouse gas emissions after saying goals could be met voluntarily」 2017年9月14日(2017年11月15日情報取得)

ニューヨーク市「NYC Delivers First-Ever City Plan to Meet the Goals of the Paris Climate Agreement」2017年10月3日(2017年11月15日情報取得)

ニューヨーク市「1.5°C: Aligning New York City with the Paris Climate Agreement」(2017年11月15日情報取得)

メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティー(Metropolitan Transportation Authority: MTA)「New York City Transit SBS」(2017年11月15日情報取得)


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美