画像

 今年8月末、英国政府は、企業経営の説明責任と信頼性の向上を目的としたコーポレート・ガバナンス改革案を公表した。本改革案の骨子は、以下のとおりである。

  • 英国の上場企業(約900社が対象)は、CEOの報酬と労働者の平均報酬の比率を年次で開示し、正当性を示すこと
  • 一定規模以上の企業は、取締役が、従業員や株主の利益をどのように考慮しているかを公的に説明すること

 また法的拘束力はもたせないが、以下項目も改革案に含まれている。

  • 経営層の報酬に対して5分の1以上の投資家による反対が表明された上場企業は、企業名を公表し、公簿に登録する

 経営陣の報酬に対する投資家からの反対表明があった企業名の公表と登録は世界初の試みとなる。

 本改革案は、メイ首相が、「一部の大手企業の問題行動が、中小企業に対する社会からの信任をも傷つけている」として、企業統治の透明性やその説明責任の改善および向上を求めたことを受け策定された。

  グレッグ・クラーク英国ビジネス・エネルギー・産業戦略担当大臣は、本改革について以下のように述べている。

 「英国はビジネスを行う上で信頼でき確信をもてる場所、と評価されていることは、グローバル経済において我が国が有する最大の資産の1つである。英国の法的制度、会社法の枠組みおよびコーポレート・ガバナンス基準は、これまでも世界中で賞賛されてきた。我々は、コーポレート・ガバナンスのフレームワークを見直すことによって、そのような評価を維持する。今回の改革案は、この高い評価を礎とし、国内の大企業が従業員や株主に対する説明責任を果たし、さらに透明性を向上することを確実にするためのものである」

 さらに、同大臣は、上場企業に従業員の利益を適切に考慮させるため、英国財務報告評議会(Financial Reporting Council、以下FRC)にコーポレートガバナンス・コードの見直しを求める、と述べた。

  本コードの見直しでは、企業は以下のいずれかの対応を、「コンプライ・オア・エクスプレイン」ベースで求められることになる。

  • 従業員を代表する非執行取締役の任命
  • 従業員諮問委員会の設置 
  • 従業員層からの取締役の選任

 また、英国政府はFRCに対して、ビジネス界や政府と協力し、大手非上場企業向けのコーポレート・ガバナンス原則を自発的に策定することも求めている。

  FRCのステファン・ハドリルCEOは、以下のようにコメントしている。

 「過去25年間にわたり評価され続けている英国のコーポレート・ガバナンスは、我が国経済の繁栄の基礎となってきた。このコーポレート・ガバナンスの枠組みをどのように変更していくのかは、我が国企業の競争力、透明性、健全性を向上させるためのカギである。このことは、ブレグジット(イギリスの欧州連合からの離脱)後、特に重要となる。景気がよくサステナブルな企業は、単に経済のためだけでなく、社会に就業機会を提供し、繁栄をもたらす。FRCは、コーポレートガバナンス・コードの全面的な見直しを進めているが、政府からのフィードバックは、有益なものとなるだろう。さらに、規模の大きな非上場企業も、重要な雇用主として、そして地域社会や家族のサポータとして、英国経済にとって必要不可欠である。したがって、彼らもまた、公共の利益にそって活動していることを確認にするため、非上場企業に適したコーポレート・ガバナンス原則を設定することは好ましいことである」

  今回の改革案は、メイ首相による2016年の当初の提案からは後退しているという一部の批判はあるが、経営者協会(Institute of Directors、以下IoD)からは評価する声が出ている。IoDのステファン・マーティン会長は、「改革案の実践的な取組みや、上場企業だけでなく規模の大きな非上場企業を対象としたガバナンス原則が設定されることを評価する」と語る。

 英国政府は、 今後関係者への諮問を経て、2018年6月までに関連法の施行を目指している。

【関連資料】
GOV.UK「World-leading package of corporate governance reforms announced to increase boardroom accountability and enhance trust in business」2017年8月29日(2017年11月2日情報取得)
Financial Reporting Council「Corporate Governance will evolve to meet the changing needs of the UK」2017年8月29日(2017年11月2日情報取得)
GLASS LEWIS「UK Announces Corporate Governance Reforms」2017年8月30日(2017年11月2日情報取得)


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美