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 英国に本社を置く資産運用会社シュローダー・インベストメント・マネジメント(以下シュローダー)は、脱炭素社会の実現に向けた取組みの進捗を示す、気温上昇予測ダッシュボード(Climate Progress Dashboard)を公表した。

 シュローダーのサステナビリティ・チームによって開発されたこのダッシュボードは、同社が気候変動に影響すると考える主要な12の要素* による気温上昇の予測値で構成されている。

 シュローダーは、IEA(国際エネルギー機関)の分析を中心に、12の各要素の変化実績から気温上昇値を予測している。たとえば、要素の1つである「産炭量」では、実際の石炭の産出量とIEAが策定した気温上昇シナリオ(2℃、4℃、6℃)が想定する水準とを比較し、気温上昇は2.2℃と予測している[図1]。また「社会的関心」も気候変動に影響をもたらす主要な要素として挙げている。ここでは、米国の世論調査会社ギャラップによる世界の年次世論調査結果を用い、気温上昇を2℃に抑えるためには、気候変動に90%の人が関心を寄せていること、4℃の場合には50%、6℃の場合には10%の人が関心を寄せているというシナリオを想定している。ギャラップの調査結果では、現在グローバルで気候変動に関心を寄せている割合は約65%であり、シュローダーは社会的関心に起因した気温上昇を3.3℃と予測している[図2]。

 

図1 気温上昇シナリオ-産炭量

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出所:Schroders「Keeping track of activity: the Climate Progress Dashboard Q2」(2017年10月27日情報取得)

 

図2 気温上昇シナリオ-社会的関心

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出所:Schroders「Keeping track of activity: the Climate Progress Dashboard Q2」(2017年10月27日情報取得)

 

 12の要素による予測結果を平均すると、気温上昇は4.1℃と予測され、パリ協定で締結された2℃目標を大きく上回る結果となった[図3]。特徴として、要素間で想定される気温上昇に大きな差が表れたことが挙げられる。例えば、産炭量から予測した気温の上昇は2.2℃であったのに対し、石油&ガス生産量から予測した気温の上昇は7.8℃と倍以上の結果となり、石油業界に内在するリスクの大きさが浮き彫りとなった。また、全ての要素において、気温上昇の予測値は2℃目標を上回る結果となった。シュローダーは、各要素における脱炭素社会に向けた取組みは未だ初期段階にあるため、今後の対応次第で気温上昇予測は大きく変化する、と述べている。

 

図3:Climate Progress Dashboard

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出所:Schroders「Climate change: calibrating the thermometer, July 2017」(2017年10月27日情報取得)


 シュローダーのヘッド・オブ・サステナブル・リサーチ、アンディ・ハワード(Andy Howard)は「気候変動は今後、世界経済、社会、金融市場を動かすインパクトになる。世界経済が脱炭素社会をベースに再構築されるか、このまま気温上昇が続くかに関わらず、投資家は気候変動の影響を避けることはできない。ダッシュボードは、投資家に客観的で透明性のある独自の見解を示すものである。また投資家が希望的観測からでなく、可能性の高い予測結果をもとに意思決定することを助けるものでもある。ここでは、政府、企業、技術革新、エネルギー業界というカテゴリーで、シュローダーが気候変動に影響すると考える12の要素を定め、気温上昇を予測している。1つの要素のみで脱炭素社会に向けた取組みの進捗を把握することはできない。多角的な視点から気候変動を考えることが重要である」と述べている。

 シュローダーは、4半期毎に2℃目標に向けた取組みの最新の進捗状況から気温上昇値を予測し、ダッシュボードを更新する予定である。  

 

*12の要素:

  • 政府による目標
  • 社会的関心
  • 政府による実践
  • 企業活動
  • 気候変動ファイナンス
  • 炭素価格
  • 電気自動車
  • 再生可能エネルギー
  • 二酸化炭素の回収・貯留
  • 石油&ガス投資
  • 産炭量
  • 石油&ガス生産量

 

<関連資料>
Schroders「News Release-Schroders launches Climate Progress Dashboard 17/07/2017」(2017年10月27日情報取得)
Schroders「Keeping track of activity: the Climate Progress Dashboard Q2」(2017年10月27日情報取得)
Schroders「Climate change: calibrating the thermometer, July 2017」(2017年10月27日情報取得)


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美