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 2007年9月、国連総会で「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択された。全文24段落、本文46条で構成されたこの宣言は、文化、アイデンティティ、言語、雇用、健康、教育の権利を含めた、先住民族の個人、集団として最低限保証されるべき権利を規定している。 第1条には、「先住民族は、集団または個人として、国際連合憲章、世界人権宣言および国際人権法に認められたすべての人権と基本的自由の十分な享受に対する権利を有する。」と先住民の基本的人権の保証が謳われている。

 現在、世界約90か国に3億7,000万人以上の先住民族が暮らしている。彼らは5,000以上の独自の文化を持ち、使用する言語は世界全体で7,000種類と推定されている言語の大半を占めると考えられている。世界の総人口に占める先住民の割合は5%未満である一方、貧困層に占めるその割合は15%と、多くの先住民が極貧の生活を強いられている[1]

 先住民は長年、戦争や環境災害のために避難を余儀なくされ、先祖の土地から追い出され、また物理的、文化的に生きるために必要な資源を奪われてきた。国連は、毎年8月9日を「世界の先住民に関する国際デー」として指定し、世界の先住民族の権利を促進、支持する記念イベントを開催している[2] 。「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されてから10年を迎えた今年、国連関連機関の代表や国際機関から数々の声明が寄せられた[3] 。

 40の国連諸機関とその他の国際機関による共同声明で、「国際的または地域的な取組みの中で、先住民族の権利には大幅な進歩がみられる一方、特に女性や子供、若者や障がい者などの弱者の差別や排斥の点では、『先住民族の権利に関する国際連合宣言』の実践が妨げられている。」と述べた。

 ビクトリア・タウリ・コーパズ国連特別報告者(先住民族の権利)、マリアム・ウォレット・アボバクリン国連先住民族常設フォーラム議長、先住民族の権利に関する専門家助言機関は共同声明で、「採択までの協議に20年を費やした『先住民族の権利に関する国際連合宣言』は、今日、先住民族との和解および彼らの権利の基準を示す進歩の証となった。しかし、未だ大きな課題が残っている。多くの地域では、先住民は10年前よりも深刻な人権侵害に直面している。」と強調した。 

 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)のイリナ・ボコヴァ事務局長は、「先住民族は、独自の文化と自然環境の守護者および実践者として、人類が普遍的に持つ幅広い言語や文化の多様性を具体化する存在である。先住民族の権利と尊厳を保障することは、過去そして未来の全人類の権利を守ることである。」と公表した。 

 国際労働機関(ILO)は、「先住民族は、世界の総人口に占める比率が5%未満に過ぎないにもかかわらず、世界の貧困層の15%を占めている。そのなかでも特に女性が、先住民であるという理由だけで、また女性であるという理由だけで、最も貧困に苦しんでいる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、先住民の社会的疎外という課題に取り組まなければならない。ILOは、各国政府、労働労使組織(employers’ and workers’ organizations)、先住民および国連関連諸機関と協働で、先住民に対する差別問題に向けた取り組みを実施している。」と発表した。

 今年、国連は「世界の先住民の国際デー」を記念してツイッターとパートナーシップを結び、SNS上で使用する特別な絵文字を作成した。また、先住民族に対するより多くの関心を集めるために、ハッシュタグ#WeAreIndigenousおよび#IndigenousDayを活用したSNS上でのエンゲージメント活動を8月8日から9月15日まで実施した。

【参考】
[1] UN - International Day of the World's Indigenous Peoples 9 August
[2] 国際連合広報センター:先住民問題
[3] UN: Protecting rights and dignity of indigenous peoples ‘is protecting everyone’s rights’, August 9th, 2017


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美