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 2017年7月7日、地方公務員共済組合連合会(以下、PAL)が管理・運用する「厚生年金保険給付調整積立金」、「退職等年金給付調整積立金」および「経過的長期給付調整積立金」について、それぞれ「運用報告書」が公表された。これらは、被用者年金制度一元化以前の2015年9月30日までPALが管理・運用していた「長期給付積立金」の運用報告に対応するものである。

 地方職員共済組合、公立学校共済組合、警察共済組合、東京都職員共済組合 および全国市町村職員共済組合連合会も、PAL同様に「厚生年金保険給付組合積立金」、「退職等年金給付組合積立金」および「経過的長期給付組合積立金」について、それぞれ「運用報告書」を公表している。

 以下で、PALの「平成28年度運用報告書」の内容を確認したい。 特筆すべき点は、前年度と比較してスチュワードシップ責任について詳述されていること、債券および株式の保有銘柄の個別開示が行われたことである。なお、「3つの積立金」に重複する記述内容については、「厚生年金保険給付調整積立金」に示した。

厚生年金保険給付調整積立金

① 運用実績
A. 運用利回り:
[時間加重収益率]+5.60%(国内債券:▲0.63% 国内株式:+14.66%外国債券:▲5.29% 外国株式:14.43%)
[実現収益率]+1.80%
[超過収益率]▲0.54%
B. 運用収益額:[総合収益額]+5,461億円(国内債券:▲245億円 国内株式:+3,590億円 外国債券:▲666億円 外国株式:2,782億円)
[実現収益額]+1,648億円
C. 2016年度末の運用資産額:10兆4,613億円
D. 年金財政上求められる運用利回りとの比較:2016年度の実質的な運用利回り(5.57%)は、財政上の前提である実質的な利回り(▲0.35%)を5.92%上回っている

② 資産構成割合
国内債券 4兆1,737億円  (39.9%)  35%(±15%)
国内株式 2兆7,664億円  (26.4%)  25%(±14%)
外国債券 1兆3,090億円  (12.5%)   15%(±6%)
外国株式 2兆2,040億円  (21.1%)  25%(±12%)
短期資産      81億円  (0.1%)
合計   10兆4,613億円
(注)
1. 基本ポートフォリオは2015年10月1日に策定した管理運用方針において定めたもの
2.オルタナティブ資産が積立金全体に占める割合は0.3%(上限5%)である

③ 基本ポートフォリオ
 PALが管理・運用する「厚生年金保険給付調整積立金」のポートフォリオは、地共済のポートフォリオの一部を形成している。そのため、地共済の基本ポートフォリオとの一体性を図る観点から、地共済と同様の基本ポートフォリオである。従って、2015年10月1日に策定した管理運用方針において、基本ポートフォリオは、国内債券35%(±15%)、国内株式25%(±14%)、外国債券15%(±6%)、外国株式25%(±12%)と定めた。

 基本ポートフォリオにおいて、財投預託金および共済独自資産は国内債券に含まれ、短期資産は各資産の乖離許容幅の中で管理されている。

④ リスク管理
 「厚生年金保険給付調整積立金の運用に関するリスク管理の実施方針」に基づいてリスク管理している。2016年度中の資産構成割合は、全ての資産において許容乖離幅の範囲内で推移した。

⑤ 義務運用(共済独自資産)
 地共済法施行規則第11条の10の3の規定により、地方債または地方公共団体金融機構の発行する債券の取得に努めなければならないとされており、2016年度末において、機構債1兆3,222億円を保有し、総合収益額(時価)26億円、修正総合収益率は0.16%であった。

⑥ 自家運用
 運用の効率化および必要な流動性確保の観点から、国内債券を自家運用している。 自家運用額は、2016年度末で1兆7,909億円と総資産額の17.1%を占める。

⑦ 委託運用
 信託銀行および投資顧問会社計37社(108ファンド)に運用を委託している。委託運用額は、2016年度末で7兆2,443億円と総資産額の69.2%である。

  • 国内債券: アクティブ運用(オルタナティブ投資を含む)、エンハンスト運用している。 17ファンドの運用を委託しており、時価総額は9,649億円、2016年度の修正総合収益率は▲0.19%である
  • 国内株式: アクティブ運用、パッシブ運用している。44ファンドの運用を委託しており、時価総額は2兆7,664億円、2016年度の修正総合収益率は14.47%である
  • 外国債券: アクティブ運用(オルタナティブ投資を含む)、エンハンスト運用、パッシブ運用をしている。27ファンドの運用を委託しており、時価総額は1兆3,090億円 、2016年度の修正総合収益率は▲5.29%である
  • 外国株式: アクティブ運用、パッシブ運用をしている。20ファンドの運用を委託しており、時価総額は2兆2,040億円、2016年度の修正総合収益率は14.54%である

⑧ 資産別、パッシブ・アクティブ別資産残高

  • 国内債券:パッシブ 1兆5,284億円(36.62%) アクティブ2兆6,453億円(63.38%)
  • 国内株式:パッシブ 1兆7,433億円(63.02%) アクティブ 1兆231億円(36.98%)
  • 外国債券:パッシブ   7,560億円(57.75%) アクティブ 5,530億円(42.25%)
  • 外国株式:パッシブ 1兆7,974億円(81.55%) アクティブ 4,067億円(18.45%)

(注)
1.エンハンスト運用は、パッシブ運用に含んでいる
2.国内債券の義務運用および自家運用はアクティブに計上(ただし、1ファンドはパッシブ)

⑨ スチュワードシップ責任
2014年5月30日  「スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明
2015年10月1日  「地方公務員共済組合連合会コーポレートガバナンス原則」改正
2016年3月31日  「株主議決権行使ガイドライン」(国内株式)改正
2016年4月1日    「株主議決権行使ガイドライン」(外国株式)制定
2016年12月26日「平成28年度スチュワードシップ活動の報告」公表

⑩ 議決権行使
 議決権行使については、改正した「地方公務員共済組合連合会コーポレートガバナンス原則」、「株主議決権行使ガイドライン(国内株式)」および「敵対的買収防衛策議案に対する地方公務員共済組合連合会の考え方」ならびに新たに制定した「株主議決権行使ガイドライン(外国株式)」に従い、PALの考え方を明確化した。運用受託機関における議決権行使状況およびエンゲージメント等の実施状況は、定期的なヒアリングで確認している。

⑪ エンゲージメント
 コーポレートガバナンスの向上による企業価値の増大を促すべく、運用受託機関に対してエンゲージメントの目的、内容、進捗管理、継続性および運営方法などの向上を求めるようにしている。

⑫ ESG投資
 PALは2010年国内株式についてSRIファンドの委託運用を開始し、現在、国内株式のESGファンドとして4プロダクトを委託(2016年度末の時価総額は910億円)している。

⑬ 運用対象の多様化(オルタナティブ資産への投資)

 「運用対象の多様化(オルタナティブ資産への投資)に係る運用方針」に基づいて、分散投資を進める観点から2015年度よりオルタナティブ投資を開始した。具体的な取り組みとして

  • マネジャー・エントリー制の導入
  • 運用プロダクトの選定:国内不動産3プロダクト、海外不動産2プロダクト、海外インフラ3プロダクト、国内プライベート・エクイティ1プロダクトの9プロダクトについて採用決定し、内6プロダクトで投資を開始した(2016年度末の時価総額は270億円)

⑭ 保有銘柄の状況
 2017年3月末時点で義務運用、自家運用で保有しているもの(債券のみ)および委託運用により間接的に保有しているものを、債券は発行体ごと、株式は銘柄ごとに集約したものの上位10位を開示している。11位以下については、PALのホームページを参照のこと。
<国内債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 日本国、地方公共団体金融機構、日本高速道路保有・債務返済機構、大阪府、地方公共団体(共同発行)、農林中央金庫、東京都、信金中央金庫および兵庫県。291発行体、4兆276億円億円
<外国債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 米国、イタリア、フランス、英国、ドイツ、スペイン、オーストラリア、ベルギーカナダおよびメキシコ。442発行体、1兆3,155億円
<国内株式保有銘柄(時価総額順)>
 トヨタ、三菱UFJFG、NTT、ソフトバンク、三井住友FG、ホンダ、KDDI、みずほFG、ソニーおよび三菱商事。全銘柄数は2,050銘柄、2兆7,538億円
<外国株式保有銘柄(時価総額順)>
 アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、ジョンソンアンドジョンソン、エクソン、JPモルガンチェース、アルファベット(C)、ウェールスファーゴおよびアルファベット(A)。全銘柄数は2,562銘柄、2兆1,872億円

経過的長期給付調整積立金

① 運用実績
A.  運用利回り:
[時間加重収益率]+5.71%(国内債券:▲0.29% 国内株式:+14.67%外国債券:▲5.35% 外国株式:+14.44%)
[実現収益率]+1.86%
[超過収益率]▲0.43%
B.  運用収益額:
[総合収益額]+5,909億円(国内債券:▲128億円 国内株式:+3,792億円 外国債券:▲692億円 外国株式:+2,936億円)
[実現収益額]+1,822億円
C.  2015年度末の運用資産額:10兆9,695億円
D.  年金財政上求められる運用利回りとの比較:2016年度の実質的な運用利回り(5.68%)は、財政上の前提である実質的な利回り(▲0.35%)を6.03%上回っている

② 資産構成割合
国内債券 4兆4,362億円  (40.4%)  35%(±15%)
国内株式 2兆9,229億円  (26.6%)  25%(±14%)
外国債券 1兆3,220億円  (12.1%)   15%(±6%)
外国株式 2兆2,875億円  (20.9%)  25%(±12%)
短期資産      8億円  (0.0%)
合計  10兆9,695億円
(注)
1.基本ポートフォリオは2015年10月1日に策定した管理運用方針において定めたもの
2.新規の掛金収入が発生しないという閉鎖型年金の特性を踏まえ、下振れリスクに特に留意しつつ、将来にわたる負債と積立金との関係を常に意識しながら、経過的長期給付事業の運営の安定に資することを目的とする。 このため、リスク・リターン等の特性が異なる複数の資産に適切に分散して投資すること(以下、分散投資)を基本とし、長期的な観点からの資産構成割合(以下、基本ポートフォリオ)を策定し、経過的長期給付調整積立金を管理・運用する

③ 義務運用
 地共済法施行規則第11条の10の3の規定により、地方債または地方公共団体金融機構の発行する債券の取得に努めなければならないとされており、2016年度末において、機構債1兆5,362億円および地方債352億円を保有し、その総合収益額(時価)は▲14億円、修正総合収益率は▲0.09%である。

④ 自家運用
 運用の効率化および必要な流動性確保の観点から国内債券を自家運用している。自家運用額は、2016年度末で1兆8,104億円、収益率(時価)は▲0.12%で総資産額の16.5%である。

⑤ 委託運用
 信託銀行および投資顧問会社計35社(102ファンド)に運用を委託している。委託運用額は、平成28年度末時点で7兆4,802億円と総資産額の68.2%である。

  • 国内債券: アクティブ運用、エンハンスト運用をしている。14ファンドの運用を委託しており、時価総額は9,478億円である。2016年度の修正総合収益率は▲0.97%である
  • 国内株式: アクティブ運用、パッシブ運用をしている。44ファンドの運用を委託しており、時価総額は2兆9,229億円である。2016年度の修正総合収益率は14.67% である
  • 外国債券: アクティブ運用、エンハンスト運用、パッシブ運用をしている。24ファンドの運用を委託しており、時価総額は1兆3,220億円である。2016年度の修正総合収益率は▲5.35%である
  • 外国株式: アクティブ運用、パッシブ運用をしている。20ファンドの運用を委託しており、時価総額は2兆2,875億円である。2016年度の修正総合収益率は14.44%である

⑥ 資産別、パッシブ・アクティブ別資産残高

  • 国内債券:パッシブ 4,055億円(9.14%) アクティブ 4兆307億円(90.86%)
  • 国内株式:パッシブ 1兆8,972億円(64.91%) アクティブ 1兆257億円(35.09%)
  • 外国債券:パッシブ   7,787億円(58.90%) アクティブ 5,433億円(41.10%)
  • 国内債券:パッシブ 1兆8,810億円(82.23%) アクティブ 4,065億円(17.77%)

(注)
1.エンハンスト運用は、パッシブ運用に含んでいる
2.国内債券の義務運用および自家運用はアクティブに計上している

⑦ 保有銘柄の状況
 2017年3月末時点で義務運用、自家運用で保有しているもの(債券のみ)および委託運用により間接的に保有しているものを、債券は発行体ごと、株式は銘柄ごとに集約したものの上位10位を開示している。11位以下については、PALのホームページを参照のこと。
<国内債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 地方公共団体金融機構、地方公共団体(共同発行)、日本国、東京都、北海道、愛知県、日本高速道路保有・債務返済機構、大阪府、神奈川県および大阪市。356発行体、4兆3,068億円
<外国債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 米国、イタリア、フランス、ドイツ、英国、スペイン、ベルギー、オーストラリア、カナダおよびメキシコ。427発行体、1兆3,301億円
<国内株式保有銘柄(時価総額順)>
 トヨタ、三菱UFJFG、NTT、ソフトバンク、三井住友FG、ホンダ、KDDI、みずほFG、ソニーおよび三菱商事。全銘柄数は2,050銘柄、2兆9,094億円
<外国株式保有銘柄(時価総額順)>
 アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、ジョンソンアンドジョンソン、エクソン、JPモルガンチェース、アルファベット(C)、ウェールスファーゴおよびアルファベット(A)。全銘柄数は2,560銘柄、2兆2,701億円

退職等年金給付調整積立金

① 運用実績
A.  運用利回り:(実現収益率)0.29%
B.  運用収益額:(実現収益額)+0.32億円
C.  2016年度末の運用資産額:199億円(簿価)

② 資産構成割合(簿価)
国内債券 189億円 (96.1%)  100%
短期資産    8億円 (3.9%)
合計    199億円
(注)
1.基本ポートフォリオは2015年10月1日に策定した管理運用方針において定めたもの
2.退職等年金給付調整積立金の運用について、国債利回り等に連動する形で給付水準を決めるキャッシュバランス型年金の特性を踏まえ、退職等年金給付事業の運営の安定に資することを目的とする

③ 義務運用
 地共済法施行規則第11条の10の3の規定により、地方債または地方公共団体金融機構の発行する債券の取得に努めなければならないとされており、2016年度末において、機構債178億円を保有し、その実現収益額(簿価)は0.31億円である。

④ 自家運用
 運用効率化の観点から国内債券を自家運用している。自家運用額は、2016年度末簿価残高は13億円、収益率(簿価)は0.03%である。

⑤ 保有銘柄の状況
 2017年3月末時点で義務運用、自家運用で保有しているものを発行体ごとに集約したものは以下のとおりである。
<国内債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 地方公共団体金融機構、兵庫県、愛知県、群馬県、東京都および福岡県。6発行体、191億円

【参考資料】
平成28年度運用報告書 概要版(2017年7月7日 地方公務員共済組合連合会)
平成28年度厚生年金保険給付調整積立金 運用報告書(2017年7月7日 地方公務員共済組合連合会)
平成28年度経過的長期給付調整積立金 運用報告書(2017年7月7日 地方公務員共済組合連合会)
平成28年度退職等年金給付調整積立金 運用報告書(2017年7月7日 地方公務員共済組合連合会)


QUICK ESG研究所 菅原 晴樹