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 本稿は、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会および日本私立学校振興・共済事業団(以下、三共済)の業務概況等について概説するシリーズの第3弾である。今回は、日本私立学校振興・共済事業団についてである。

 第1弾の国家公務員共済組合連合会については、こちらです。
「三共済の「平成28年度業務概況書」について その1~国家公務員共済組合連合会~」
 第2弾の地方公務員共済組合連合会については、こちらです。
「三共済の「平成28年度業務概況書」について その2~地方公務員共済組合連合会~」

 日本私立学校振興・共済事業団

 日本私立学校振興・共済事業団(以下、PMAC)は、従来の日本私学振興財団と私立学校教職員共済組合の解散後、「日本私立学校振興・共済事業団法」に基づいて、1998年に設立された。「私学振興に係る業務を総合的に実施し、私立学校の教育と研究の充実、向上および経営の安定に寄与するとともに教職員の福利厚生の充実を図り、私学振興の先導的な拠点として、日本の教育・研究の発展に貢献する」ことを基本理念としている。主務大臣は文部科学大臣である。

 PMACの業務は「助成業務」と「共済業務」の2つである。「助成業務」は、私学に対する①補助事業、②貸付事業、③助成事業、④寄付金事業、⑤経営支援・情報提供事業である。「共済業務」は、①短期給付(医療)事業、②年金等給付事業、③福祉(保健・医療・宿泊・積立貯金・積立共済年金、貸付)などである。

 

【私立学校数等(私学共済制度統計要覧 平成28年版より)】

  • 学校数
    14,271(内訳:幼稚園8,552 専修2,020 高校1,393 中学711 大学659 等)
  • 加入者数
    553,741人(内訳:大学245,027 幼稚園115,883 高校85,650 専修42,415 中学16,147 等)
  • 共済年金給付等受給者数
    451,206人

【PMACの年金積立金の管理・運用】

 私学共済年金は私学教職員共済法等によって、従来、長期給付(年金)事業として「長期給付積立金」を運用してきた。2015年10月1日の被用者年金制度の一元化に伴って、厚生年金保険法第79条の6第1項等の規制に基づき、「厚生年金保険給付積立金等の管理運用の方針」、「経過的長期給付積立金の管理運用の方針」および「退職等年金給付積立金等の管理運用の方針」を制定した。(2015年9月30日)これらの基本的な指針(以下、積立金基本指針)に適合するように、年金積立金の管理運用をすることとなった。

 被用者年金制度一元化に適合した、PMACの年金積立金の運用は、次の通り。

  • 厚生年金保険給付積立金
     私学共済年金のいわゆる1階および2階部分に相当し、厚生年金保険事業の共通財源として一体性を確保しつつ、長期的に積立金の実質的な運用利回り1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とする。モデルポートフォリオとの整合性を持つ。
  • 経過的長期給付積立金
     私学共済年金の旧3階部分(旧職域部分相当給付)に必要な流動性を確保しつつ、長期的に積立金の実質的な運用利回り1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とする。なお、積立金の額が経過的長期給付に充てるために必要な額を超える場合には、その超える額に相当する部分を基本ポートフォリオの対象に含めず、その全額を国内債券および短期資産で運用する。
  • 退職等年金給付積立金
     新3階部分で、キャッシュバランスプランによる積立方式で新たな保険料収入による積上げを行う。退職等年金給付の制度上設定される基準利率以上の運用利回りを確保することを目標とする。

【平成28年度業務概況書】

 平成28年度業務概況書は、「厚生年金保険給付積立金」、「経過的長期給付積立金」および「退職等年金給付積立金」それぞれについて公表している。以下、「3つの積立金」の業務概況書の内容について確認したい。今年度の特筆すべき点は、前年度と比較してスチュワードシップ責任について詳述されていること、債券および株式の保有銘柄が個別開示されたことが挙げられる。なお、「3つの積立金」に重複する記述内容は、「厚生年金保険給付積立金」に示した。

厚生年金保険給付積立金

① 運用実績
A. 運用利回り:
[修正総合収益率] +4.95%(国内債券:▲0.57% 国内株式:+13.88% 外国債券:▲3.25% 外国株式:+12.34% 短期資産:+0.14%)
[実現収益率] +2.02%
[超過収益率] ▲0.66%
B. 運用収益額:
[総合収益額] +986億円(国内債券:▲42億円 国内株式:+584億円 外国債券:▲85億円 外国株式:+526億円 短期資産:+2億円)
[実現収益額] +372億円
C. 2016年度末の運用資産額:2兆562億円
D. 年金財政上求められる運用利回りとの比較:2016年度の実質的な運用利回り(+4.92%)は、財政上の前提である実質的な利回り(▲0.35%)を+5.27%上回っている

② 資産構成割合
国内債券  6,707億円  (32.6%)  35%(±10%)
国内株式  4,676億円  (22.7%)  25%(±9%)
外国債券  2,367億円  (11.5%)     15%(±4%)
外国株式  4,622億円  (22.5%)   25%(±8%)
短期資産   2,190億円  (10.7%)
合計    2兆562億円

③ 基本ポートフォリオ
 2015年10月1日に策定した「管理運用方針」において、基本ポートフォリオは、国内債券35%(±10%)、国内株式25%(±9%)、外国債券15%(±4%)、外国株式25%(±8%)と定めた。

④ 共済独自資産の運用状況
 助成勘定(私立学校への融資事業)への貸付けを行っており、2016年度末時点での運用資産額(簿価)は1,240億円、修正総合収益率は+1.33%

⑤ スチュワードシップ責任
 2014年8月25日「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を策定した。2016年度の取り組みとしては、運用受託機関を通じて株式運用しているため、公表した方針に従い、国内株式の運用受託機関に対して、スチュワードシップ活動の実施状況について報告を求め、その概要を公表した。

⑥ 株主議決権行使
 議決権行使に関しては、「株主議決権行使にかかる実務ガイドライン」を策定している。運用受託機関に対して、実務ガイドラインで示す株主議決権行使基準に従って、適正に株主議決権を行使するよう求め、その行使状況の報告を受けている。

⑦ 委託運用状況
 信託銀行および投資顧問会社計19社(27ファンド)に運用を委託している。委託運用額は、2016年度末で1兆1,665億円と総資産額の56.7%である。

  • 国内株式:12ファンドの運用を委託しており、時価総額は4,676億円である
  • 外国債券:5ファンドの運用を委託しており、時価総額は2,368億円である
  • 外国株式:10ファンドの運用を委託しており、時価総額は4,623億円である

⑧ 資産別、パッシブ・アクティブ別資産残高

  • 国内株式:パッシブ 2,653億円(56.7%) アクティブ 2,023億円(43.3%)
  • 外国債券:パッシブ 1,576億円(66.5%) アクティブ 792億円(33.5%)
  • 外国株式:パッシブ 3,419億円(74.0%) アクティブ 1,204億円(26.0%)

⑨ 保有銘柄の状況
 2017年3月末時点で保有している債券および株式を、債券は発行体ごと、株式は銘柄ごとに集約したものの上位10位を開示している。11位以下については、PMACのホームページを参照のこと。
<国内債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 日本国、地方公共団体金融機構、日本高速道路保有・債務返済機構、地方公共団体(共同発行)、鉄道運輸機構、愛知県、新関西国際空港、日本政策投資銀行、横浜市および東京都。26発行体、5,371億円
<外国債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 米国、ファニメイ、英国、フランス、イタリア、米国連邦政府抵当金庫(ジニーメイ)、フレディマック、スペイン、ドイツおよび韓国。1,152発行体、2,313億円
<国内株式保有銘柄(時価総額順)>
 トヨタ、三菱UFJFG、ソフトバンク、NTT、KDDI、三井住友FG、ダイキン工業、日本たばこ産業、ソニーおよびみずほFG。全銘柄数は1,900銘柄、4,653億円
<外国株式保有銘柄(時価総額順)>
 アップル、マイクロソフト、アマゾン、JPモルガンチェース、フェイスブック、アルファベット(A)ジョンソンアンドジョンソン、エクソン、ウェールスファーゴおよびアルファベット(C)。全銘柄数は2,464銘柄、4,569億円

経過的長期給付積立金

① 運用実績
A.  運用利回り:
[修正総合収益率] +6.92%(国内債券:▲1.46% 国内株式:+15.94% 外国債券:▲2.84% 外国株式:+18.06% 短期資産:+0.00%)
[実現収益率] +3.71%
[超過収益率] +0.81%
B.  運用収益額:
[総合収益額] +821億円(国内債券:▲64億円 国内株式:+439億円 外国債券:▲55億円 外国株式:+502億円 短期資産:0億円)
[実現収益額] +395億円
C.  2016年度末の運用資産額:1兆2,433億円
D.  年金財政上求められる運用利回りとの比較:2016年度の実質的な運用利回り(+6.89%)は、財政上の前提である実質的な利回り(▲0.35%)を+7.24%上回っている

② 資産構成割合
国内債券   3,854億円  (31.0%)  35%(±10%)
国内株式   3,288億円  (26.4%)  25%(±9%)
外国債券   1,915億円  (15.4%)     15%(±4%)
外国株式   3,376億円  (27.1%)   25%(±8%)
短期資産      0億円   (0.0%)
合計     1兆2,433億円

(参考)
資産合計(経過的長期給付充当額+それを超える額)
国内債券 1兆1,686億円  (54.2%)
国内株式   3,288億円  (15.2%)
外国債券   1,915億円   (8.9%)
外国株式   3,376億円  (15.7%)
短期資産    1,303億円   (6.7%)
合計    2兆1,568億円

③ 共済独自資産の運用状況
 貸付経理(加入者への融資事業)への貸付けおよび不動産へ運用しており、2016年度末時点での運用資産額(簿価)は398億円、修正総合収益率は+0.44%である。

④ 委託運用状況
 信託銀行および投資顧問会社計18社(25ファンド)に運用を委託している。委託運用額は、2016年度末で8,579億円、総資産額の69.0%である。

  • 国内株式:11ファンドの運用を委託しており、時価総額は3,288億円である
  • 外国債券:5ファンドの運用を委託しており、時価総額は1,915億円 である
  • 外国株式:10ファンドの運用を委託しており、時価総額は3,376億円である

⑤ 資産別、パッシブ・アクティブ別資産残高

  • 国内株式:パッシブ 1,899億円(57.7%) アクティブ1,390億円(42.3%)
  • 外国債券:パッシブ 1,244億円(64.9%) アクティブ 671億円(35.1%)
  • 外国株式:パッシブ 2,445億円(72.4%) アクティブ 931億円(27.6%)

⑥ 保有銘柄の状況
 2017年3月末時点で保有している債券および株式を、債券は発行体ごと、株式は銘柄ごとに集約したものの上位10位を開示している。11位以下については、PMACのホームページを参照のこと。
<国内債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 日本国、地方公共団体金融機構、日本高速道路保有・債務返済機構、住宅金融支援機構、地方公共団体(共同発行)、電源開発、JR東日本、東京都、JR東海および北陸電力。76発行体、3,848億円
<外国債券保有銘柄 発行体別(時価総額順)>
 米国、ファニメイ、英国、フランス、フレディマック、米国連邦政府抵当金庫(ジニーメイ)、ドイツ、オーストラリア、オンタリオ州およびベルギー。558発行体、1,884億円
<国内株式保有銘柄(時価総額順)>
 トヨタ、三菱UFJFG、ソフトバンク、NTT、KDDI、三井住友FG、ソニー、日本たばこ産業、ダイキン工業およびホンダ。全銘柄数は1,901銘柄、3,268億円
<外国株式保有銘柄(時価総額順)>
 アップル、マイクロソフト、アマゾン、JPモルガンチェース、フェイスブック、アルファベット(A)ジョンソンアンドジョンソン、エクソン、ウェールスファーゴおよびアルファベット(C)。全銘柄数は2,430銘柄、3,337億円

退職等年金給付積立金

① 運用実績
A.  運用利回り:(実現収益率)1.20%
B.  運用収益額:(実現収益額)5億円
C.  2016年度末の運用資産額(簿価):642億円

② 資産構成割合
国内債券   603億円 (94.0%)  100%
短期資産     38億円 (6.0%)
合計    642億円
(注)国内債券には貸付金等を含む 

③ 基本ポートフォリオ
国内債券100%(▲10%)、国内株式0%(+10%)
(注)基本ポートフォリオは2015年9月30日に策定した管理運用方針において定めたもの

【参考資料】
平成28年度 業務概況書(厚生年金保険給付積立金)(日本私立学校振興・共済事業団)
平成28年度 業務概況書(経過的長期給付積立金)(日本私立学校振興・共済事業団)
平成28年度 業務概況書(退職等年金給付積立金)(日本私立学校振興・共済事業団)
厚生年金保険給付積立金等の管理運用の方針 (2015年9月30日制定 日本私立学校振興・共済事業団)
経過的長期給付積立金の管理運用の方針 (2015年9月30日制定 日本私立学校振興・共済事業団)
退職等年金給付積立金等の管理運用の方針 (2015年9月30日制定 日本私立学校振興・共済事業団)
平成27年度スチュワードシップ活動の実施状況(日本私立学校振興・共済事業団)


QUICK ESG研究所 菅原 晴樹