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 ニュージーランドの公的年金基金、New Zealand Superannuation Fund(運用資産総額350億ニュージーランドドル、以下NZスーパーファンド)は、8月15日、二酸化炭素排出量の多い297企業の株式(約9.5億ニュージーランドドル)を売却し、低炭素企業の株式に入れ替えたことを公表した。この結果、運用資産総額の40%にあたる140億ニュージランドドルのパッシブ・ポートフォリオが低炭素に対応したことになり、6月末時点で同ファンドのポートフォリオの炭素強度(炭素排出量を売上で割った値[1])は19%低下した。

 同ファンドは昨年10月、化石燃料資源関連や二酸化炭素排出量が多い企業の株式へのエクスポージャーを引き下げる気候変動投資方針を打ち出していた[2]

 同ファンドのエイドリアン・オアCEOは、「長期的な投資家にとって気候変動はマテリアルなリスクであるという認識は共通している。先進的な投資家は、気候変動リスクを低減させ、低炭素経済への移行による機会を見出すためにポートフォリオを再構築している」と語る。
 マット・ウィネイCIOは、「我々のような長期投資家の時間軸からみると、金融市場は気候変動リスクを過小評価し、市場に適切に反映できていない。世界のエネルギーシステムは化石燃料から移行しつつある。投資期間の長い投資家にとって、炭素排出量や炭素資産の影響度の大きい投資先企業へのエクスポージャーを削減することは、低コストの保険を契約するようなものである」と語る。

 一部売却またはダイベストメント対象となった企業には、石油ガス産業や電気などの公共事業が含まれているが(日本企業では、太平洋セメントとトクヤマが一部売却の対象)、エクソンモービルやBP、ロイヤル・ダッチ・シェルといった二酸化炭素排出量の大きい大手石油企業は売却対象とはならなかった。
 NZスーパーファンドは、「特定の業種を投資対象から外す手法(カテゴリカル・エクスクルージョン)ではなく、MSCI ESGリサーチによる評価を活用し、ESGレーティングが同業他社に比べて高く、また気候変動に対する対応が確認できる企業への投資は継続する。売却対象となった企業であっても、ESGレーティングが改善すれば、再度投資対象になる」と説明している。ウィネイCIOは、「今回の対象は、全ポートフォリオの40%を占めるパッシブ運用の株式であったが、今後はアクティブ運用のポートフォリオの二酸化炭素排出量削減に着手する。また、投資分析やエンゲージメント対象企業の選定および低炭素社会への移行における新たな投資機会の調査時に、気候変動リスクを考慮することを促進させている」と語っている。

 

<関連資料>

NZ SUPER FUND SHIFTS PASSIVE EQUITIES TO LOW-CARBON、Aug 15 2017

NZ SUPER FUND CARBON REDUCTION - Q&A

[1] NZ SUPER FUND CARBON FOOTPRINT 2017,P6

[2]【ニュージーランド】公的年金基金、気候変動投資ポリシーを発表。全ポートフォリオで気候変動リスクを組入れ、2016年11月1日


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美