工場の煙の画像

 金融を専門とするイギリスの非営利シンクタンクであるカーボントラッカー(Carbon Tracker)は、石油ガス企業の低炭素社会移行リスクを調査したレポート「2℃シナリオからの乖離:2Degrees of Separation」を公表した。同レポートは、カーボントラッカーが国連責任投資原則(PRI)の他、欧州の年金基金および運用機関5社*と共同で作成したものである。

 レポートでは、世界の大手石油ガス企業69社の供給計画が、気温上昇を2℃以内に抑える場合の炭素予算(あるシナリオ下で排出可能な炭素の累積排出量上限。カーボンバジェット)に則ったものであるか、分析結果を一覧で報告している。また、2℃シナリオの炭素予算を超える各社の設備投資や生産量についても言及している。 

 分析結果からは、次の点が明らかになった。現状維持のままでは業界全体で2025年までに想定されているCAPEX(設備投資支出)の約3分の1にあたる2兆3000億米ドルが2℃シナリオの炭素予算を超えること、個社別の超過量は69社の間で大きく異なること、炭素予算を超える全体の供給量のうち3分の2は民間の石油ガス企業によるものであること、の三点である。

 この調査結果は、投資家の投資戦略や方針に応じた活用が考えられる。例えば、投資家が2℃シナリオに則った設備投資計画を持つ投資先を探している場合に確かな情報を提供できる。

 本レポートの公表に際し、9月5日、ストックホルムで投資家向けイベントが開催される。PRI、カーボントラッカーおよびAP7の共同主催で、IIGCC*が協賛する。このイベントでは、調査結果の報告の他、投資家が調査結果を活用してどのように企業とのエンゲージメントを促進させるかが話し合われる予定である。

*AP7(スウェーデンの公的年金の1つ)、PKA(デンマークの年金基金)、FRR(フランスの公的積立年金基金)、リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメント(Legal & General Investment Management。英国の大手資産運用会社)およびPGGM(オランダの資産運用機関)

**IIGCC(Institutional Investors Group on Climate Change):気候変動対応のために欧州の金融機関や投資家で構成されたグループ

 

<関連資料>
2 degrees of separation – Transition risk for oil and gas in a low carbon world

PRI:2 Degrees of Separation: Transition risks for oil & gas in a low carbon world | Stockholm launch


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美