児童労働の画像

 スウェーデンの公的年金基金 AP1、AP2、AP3、AP4の代表者から構成される倫理委員会(Council on Ethics, Swedish National Pension Funds)が、2016年度版の年次報告書を公表した。

  倫理委員会(以下、委員会)は2007年に設立され、企業の持続可能な日常的活動がリスクの低減と同時にリターンの最大化をもたらす、という信念にもとづき、各基金の投資先企業とのエンゲージメント活動を行っている。

 主な実施項目は以下の通りである。

  •  スクリーニング
    (AP基金の投資先企業約4,000社のうち、スウェーデン政府が批准している国際規範に違反しているグローバル企業(海外企業)や潜在的な課題を抱えている企業を、メディアやNPO法人などの情報をもとに特定)
  • 違反事例の分析
  • 企業との対話
  • AP基金に対し、改善が見込まれない企業の株式売却を推奨

  委員会は設立以来、毎年活動報告書を公表している。10周年にあたる2016年度は、前年に引き続き、生物多様性、腐敗防止、人権の分野を焦点とし、世界316社との対話を実施した。特に人権分野では、タイの企業が抱える違法漁業と強制労働問題、カタールでFIFAワールドカップの競技場建設に従事する労働者への強制労働問題、フランスの企業で指摘されている劣悪な労働環境問題、ココアやたばこ産業における強制労働や児童労働課題などへの取組みが報告されている。また、鉱業廃棄物の河川投棄に対する委員会の改善要請に応じなかったとして、中国の鉱山会社ズージン・マイニング(Zijin Mining/紫金鉱業集団)を投資対象から除外するよう、各AP基金に勧告している。

 委員会の議長ピーター・ルンドクヴィスト(Peter Lundkvist)氏は、「委員会は過去10年間、投資先企業の課題解決の手段として対話によるエンゲージメントを実施してきた。これは、投資先企業の株式を売却することに比べ、持続可能な戦略である。当初は珍しかったが、投資先企業の課題改善のために株主が働きかけることは、今では責任投資の標準的な手法となっている。委員会は、これまでの成果に決して安住することなく、環境、人権、腐敗課題の改善に向けた取組みを継続する」と語る。
 

【AP基金(AP1~4、AP6、AP7)】
 スウェーデンの公的年金保険制度は、賦課方式に基づく年金制度と、加入者が自ら運用先を選択する積立方式の年金制度に分かれる。
それぞれ、Allmänna Pensionfonden(公的年金基金)と呼ばれる6つのファンド(AP1~4、AP6、AP7)が運用している。

 AP1~4は、賦課方式の年金制度で新規流入積立金の運用を担う。同一の法のもと、毎年保険料を4分の1ずつ受け入れている。また、人口動態や経済的ショックによる給付の変動を吸収する役割を持つため、バッファーファンドとも呼ばれる。

 AP6は、歴史的経緯から残された基金であり、資金の流入および流出はない。

 AP7は、積立方式の年金制度で運用を担う。民間の運用会社が管理する多数のファンドから加入者が運用先を選択する方式だが、どのファンドも選択しない加入者のためのデフォルト基金としての役割を持つ。

 

[関連ページ]
Ethical council of the AP funds annual report 2016
Council on Ethics, Swedish National Pension Funds
Press release


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美