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この記事は【GPIF】「平成28年度 業務概況書」を公表 その2「第2部 年金積立金管理運用独立行政法人について」 および「第3部 資料編」(抜粋) の前篇です。


 年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)は2017年7月7日に「平成28年度 業務概況書」を公表し、同日、髙橋理事長の会見が行われた。
 髙橋理事長の会見資料では、2016(平成28)年度の市場環境および運用実績、透明性の向上(情報開示の重要性、保有銘柄の開示)、スチュワードシップ活動(スチュワードシップ原則、議決権行使原則の制定、採用ESG指数と今後の方針)および運用の多様化について説明されている。

 2016年度の資産運用状況は、内外株式の価格上昇の影響から収益率+5.86%、収益額+7兆9,363億円と、前年度(収益率▲3.81%、収益額▲5兆3,098億円)を大きく上回る結果となった。また、市場運用を開始した2001年度から2016年度までの過去16年間の累積収益率は+2.89%、累積収益額は53兆3,603億円で、2016度末の運用資産額は144兆9,034億円(2015年度末の運用資産額は134兆7,475億円)となった。
 2016年12月に、GPIFの組織等の見直しを含む「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、2017年10月の施行に向けて、合議制による意思決定の導入などガバナンス改革の準備が進められている。

 以下、2016年度の業務概況を「業務概況書」に沿って、「第1部 2016(平成28)年度の管理及び運用状況」、「第2部 年金積立金管理運用独立行政法人について」 および「第3部 資料編」の2つのパートに分けて確認していくことにする。

第1部 2016(平成28)年度の管理及び運用状況

1.資産全体

(1)運用実績

① 収益率:+5.86%

② 収益額:+7兆9,363億円

③ 累積収益額、運用資産額:市場運用を開始した2001年度から2016年度までの累積収益率は+2.89%、累積収益額は53兆3,603億円、2016度末の運用資産額は144兆9,034億円

④ インカムゲイン:2016年度の収益額は+2兆5,334億円(収益率+1.75%)、市場運用を開始した2001年度から2016年度までの累積収益率は+1.59%、累積収益額は28兆808億円

⑤ 年金財政上求められる運用利回りとの比較:市場運用を開始した2001年度からの「実質的な運用利回り(累積)」は2.80%で、「財政計算上の前提である実質的な運用利回り」の0.19%を上回っている
(注)「実質的な運用利回り」とは、名目運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの

⑥ 運用資産額・構成割合(年金積立金全体)

 国内債券 478,707億円(31.68%)  35%(±10%)
 国内株式 351,784億円(23.28%)  25%(±9%)
 外国債券 196,817億円(13.03%)  15%(±4%)
 外国株式 349,262億円(23.12%)  25%(±8%)
 短期資産 134,365億円(8.89%)   -%(-%)

(注)1.右端の数値は基本ポートフォリオ(カッコ内は乖離許容幅)
   2.オルタナティブ資産の年金積立金全体に占める割合は0.07%(基本ポートフォリオでは上限5%)

⑦ 複合ベンチマーク収益率との乖離の要因分析

 ・運用資産全体の収益率:+5.86%
 ・複合ベンチマーク収益率:+6.22%
 ・超過収益率:▲0.37%
 ・資産配分要因:▲0.66%
 ・個別資産要因:+0.33%

⑧ 管理運用委託手数料

 ・管理運用委託手数料額:400億円
 ・管理運用委託手数料比率(対平均残高比)0.03% 
(cf. 2015年度は同383億円 同0.03%)

(2)基本ポートフォリオの検証

① 現行の資産構成割合は効率的で、目標利回りを満たしていることが確認されている

2.債券運用

① 国内債券市場

 ・10年国債利回り:前年度末の▲0.04%から今年度末は+0.07%へ上昇(債券価格は下落)
 ・超過収益率:+0.05%(アクティブ運用+0.18%、パッシブ運用+0.02%)

② 外国債券市場

 ・米国10年国債利回り:前年度末の1.77%から今年度末は2.39%へ上昇(債券価格は下落)
 ・ドイツ10年国債利回り:前年度末の0.16%から今年度末は0.33%へ上昇(債券価格は下落)
 ・外国為替市場においては、ドル/円は前年度末の112.40円から今年度末は111.43円となった。ユーロ/円は前年度末の128.08円から今年度末は119.18円となった
 ・超過収益率:+2.19%(アクティブ運用+5.91%、パッシブ運用+0.05%)

③ 自家運用

 ・国内債券パッシブファンド、キャッシュアウト等対応ファンド、物価連動国債ファンド、財投債ファンド、短期資産ファンドおよび外貨建て短期資産ファンド等について自家運用(時価総額21兆9,688億円 運用資産総額の約15%)を行っている

④ インフラ投資

 ・外貨建て投資信託受益証券を保有している
 ・年度末の時価総額:964億円
 ・収益額:▲53億円

3.株式運用

① 国内株式市場

 ・東証株価指数(TOPIX配当なし):前年度末の1,347.2ポイントから今年度末は1,512.6ポイントへ上昇
 ・ベンチマークであるTOPIX(配当込み)に対する超過収益率:+0.20%(アクティブ運用+2.61%、パッシブ運用▲0.04%)

② 外国株式市場

 ・ダウ平均株価指数:前年度末の17,685.09ポイントから今年度末は20,663.22ポイントへ上昇
 ・ドイツDAX株価指数:前年度末の9,965.51ポイントから今年度末は12,312.87ポイントへ上昇
 ・外国株式のベンチマークは、MSCI KOKUSAI(円ベース、配当込み、GPIFの配当課税要因考慮後)、MSCI EMERGING MARKETS(円ベース、配当込み、税引き後)およびMSCI ACWI(除く日本、円ベース、配当込み、GPIFの配当課税要因考慮後)の複合インデックス(それぞれの運用金額による構成比で加重平均したもの)である。これに対する超過収益率:▲0.41%(アクティブ運用 ▲2.49%、パッシブ運用 ▲0.01%)

③ プライベートエクイティ投資

 ・年度末の時価総額:42億円
 ・収益額:▲2億円

4.スチュワードシップ責任・株主議決権行使

<スチュワードシップ責任>

① 2016年度のスチュワードシップ活動における取組

 ・JPX日経400採用企業向けアンケートの実施
 ・「企業・アセットオーナーフォーラム」の開催
 ・「グローバル・アセットオーナーフォーラム」の開催
 ・GPIFの運用受託機関が選ぶ優れた「コーポレート・ガバナンス報告書」、「統合報告書」の公表
 ・運用会社の評価基準の改定(国内株式パッシブ運用受託機関におけるスチュワードシップ責任に係る取組のウェイト引き上げ等)
 ・PRIや国内外関係団体・機関との連携強化
 ・英国30%Club、米国Thirty Percent Coalitionへの加盟
 ・国内株式を投資対象としたESG指数の公募

② 運用受託機関におけるスチュワードシップ活動の状況

 ・国内株式の運用を委託する全ての運用受託機関のスチュワードシップ活動について報告を求め、継続的なエンゲージメントの実施や対話内容の充実等、運用受託機関と投資先企業との間で前向きな対応が行われていること、また運用受託機関のスチュワードシップ活動の課題を確認

③ 運用受託機関への期待と課題

 ・スチュワードシップ時代のアセットオーナーのニーズに合致した新しいパッシブ運用のビジネスモデルの提案
 ・運用会社の適正な役職員報酬体系の検討

④ GPIFの今後の対応

 ・双方向の対話を重視した運用受託機関への「エンゲージメント」
 ・新しいパッシブ運用のビジネスモデルに対応したパッシブ運用の評価方法や手数料体系の検討
 ・エンゲージメントやESGインテグレーションの評価手法の改善
 ・議決権行使を含む運用受託機関のガバナンス、利益相反防止の実効性確保の確認
 ・外国株式運用受託機関に対する日本国外でのスチュワードシップ活動、ESG活動に関するヒアリング

<株主議決権行使>

 ・2016年度の株主議決権の行使状況
  国内株式運用受託機関の対応状況:28ファンドすべて議決権行使
  外国株式運用受託機関の対応状況:22ファンドすべて議決権行使

5.主要な取組

(1)運用受託機関等の公募および管理

① マネジャー・エントリー制度導入に伴う公募の実施

② 国内株式を対象としたESG指数の公募

③ 運用受託機関等の管理・評価

(2)スチュワードシップ責任を果たす取組の推進

① スチュワードシップ推進課の設置 (2016年10月)

② インベストメントチェーンにおけるWin-Win環境の構築を目指したフォーラムの開催

③ 運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する企業向けアンケートの実施

④ 責任投資原則協会(PRI Association)理事に就任(2016年11月)

(3)保有全銘柄の開示
(4)調査研究の推進 

① GPIF Finance Awardsの創設

 

<参考>
平成28年度業務概況書(2017年7月7日 GPIF公表)
2016(平成28)年度 業務概況書 会見 髙橋理事長会見説明資料(2017年7月7日 GPIF公表)
保有全銘柄について(2016(平成28)年度末)[EXCEL:477KB](2017年7月7日 GPIF公表)

 

<関連記事>
その2
【GPIF】「平成28年度 業務概況書」を公表 その2「第2部 年金積立金管理運用独立行政法人について」 および「第3部 資料編」(抜粋)

過去記事
【機関投資家】GPIF「平成27年度業務概況書」について <第1部 平成27年度の管理及び運用状況>
【機関投資家】GPIF「平成27年度業務概況書」について <第2部 年金積立金管理運用独立行政法人について>
【機関投資家】GPIF「平成27年度業務概況書」について <第3部 法人設立10年のあゆみ および 第4部 資料編>


QUICK ESG研究所 菅原 晴樹