カウンティ・ホールの画像
RIヨーロッパロゴ

 

ロンドンを拠点にESG投資情報を発信するレスポンシブル・インベスター(RI: Responsible Investor)は6月6日から7日の2日間にわたり、ウェストミンスター橋のテムズ川南岸に位置するカウンティ・ホールで「RI ヨーロッパ 2017」を開催した。

■ESGイベントに600人超が参加

  今回のESGイベントには、ESG投資に積極的な機関投資家や評価機関、NGO(非政府組織)など、欧州のみならず世界各国から600人を超える関係者が詰めかけた。1日目のイベント中に会場内にアラームが鳴り響き、参加者全員がホール外に一時避難するハプニングにも見舞われたが、会場内では所狭しと駆け回る関係者たちの姿が見られ、ESGの最新動向について活発な情報交換が繰り広げられた。

■運用会社に一段のガバナンス強化を迫るGPIF

 今回で10回目となった記念すべきイベントには、世界最大規模の機関投資家(アセットオーナー)である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道理事兼CIOも参加し、基調講演した。GPIFの理事兼CIOに就任して以降の2年半を振り返り、長期投資におけるESGの視点の重要性などを改めて強調した。運用受託機関(アセットマネージャー)に対しては、現状のガバナンスに「今のところ満足していない」と指摘した。顧客(GPIF)のニーズにどう応えるかは、その手腕とリソースを持つアセットマネジャー側の責任であるとしたうえで「アセットマネジャーに長期的なESGの視点に立って我々の運用資金を管理するよう求める」と述べた。また、ESG投資を重視しない運用先については運用委託額が減る可能性を示唆した。

■GPIF水野理事兼CIO、ESG普及へ指数開発促進

 GPIFの運用資産額は140兆円を超え、ポートフォリオに組み入れる投資先企業は国内外で約5,000社に上る。規模の大きさを考慮した慎重な運用方針が求められる中、水野理事兼CIOは「ESGを考慮することはとても自然」だとする。一方で「日本企業に対するESG評価機関の評価は、ほとんどの企業について驚くほど低い」ことに言及した。GPIFは他の大きなアセットオーナーと違い、投資先企業に対して直接関与することが法的に禁止されている点も課題に挙げ、これらに対応する1つの取り組みとして、ESG投資のための指数開発を積極的に促進していると述べた。ESG指数の開発により、「企業側はどのように評価され、どのようにスコア付けされているかが理解できる」(水野理事兼CIO)。指数開発事業者に対し、どの情報を見ているのか企業に分かるよう、指数算出の根拠を開示するよう求めた。

 なお、GPIFは優秀な運用報告などを表彰する「RIアワード」で、社会的責任投資やESG投資を世界的に広め、業界に貢献した年金やファンドを表彰する「Innovation & Industry Leadership」のアセットオーナー部門で次点となった。また、水野理事兼CIOは優秀個人貢献賞を受賞した。

■気候変動などテーマ別に活発な議論

 イベントではその後も、市場関係者らによる基調講演やパネルディスカッション、複数会場に分かれた分科会が開かれた。参加者は各自の関心や興味、研究課題に合わせて各ブースを歩き回った。2020年以降の地球温暖化対策を決めた国際的枠組み「パリ協定」から脱退する方針をトランプ米大統領が決定したとあり、気候変動に関する議論も活発だったほか、気候変動に関わる具体的な企業の行動事例、長期投資の重要性、ESGとスマートベータなど多岐にわたるテーマについて識者が議論を交わした。

 長期投資の観点では「アセットオーナーは短期的なボラティリティーや短期志向の考え方に耐え得る強力なガバナンスが必要」(英ウェルカム・トラスト)、「個々の企業の長期的な成長はESGファクターに大きく依存している」(米ノーザン・トラスト)といった意見が出ていた。

 イベント最後のテーマとなったのは「今後5年から10年の持続可能なファイナンスにおいて何が期待できるか」だった。トランプ米大統領によるパリ協定の脱退表明などを念頭に、キャピタリズムに対する懸念などが共有されたが、RIイベント全体の総論としては排出量の削減や脱炭素化といった方向性に変化はないとの見方が多かった。

 環境への取り組みは、国によって程度に差があるものの、各国のコスト共有意識があって成り立つ。今回の件をきっかけに改めてESGに関心が集まったことをポジティブに捉え、ESGの理念や考え方について「コミュニケーションをもっと取っていく必要がある」(英国国教会)との声もあった。


QUICK ロンドン支店 荒木 朋