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 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 責任投資原則(PRI)は、人権に関する新たなスチュワードシップ・イニシアチブの一環として、エンゲージメント対象とする企業40社を明らかにした。

 そのリストには世界最大の金属・鉱業企業数社のほか、再生可能エネルギーの有力企業も含まれている。具体的には金属・鉱業セクターではグレンコア(スイス)、リオ・ティント(英国)、ヴァーレ(ブラジル)、ポスコ(韓国)、アングロ・アメリカン(英国)、BHP(オーストラリア)、再生可能エネルギーセクターではE.ON(ドイツ)、エネル(イタリア)、イベルドローラ(スペイン)、オーステッド(デンマーク)、EDP(ポルトガル)、EDF(フランス)などの名前が並んでいる(訳者注:日本企業では金属・鉱業セクターに日本製鉄が含まれる)。

 「Advance」と呼ばれるイニシアチブは昨年12月に始動し(それに先立つ昨年8月にRIはイニシアチブ発足に向けて動いていることを独占報道)、企業に人権尊重を促すことへの投資家の貢献度と社会的課題の解決に向けた投資家の取り組みを最大化することを目標に掲げている。

 5月5日に発表された投資家声明によると、エンゲージメント対象企業は国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)を全面的に順守した上で、人権を尊重する企業の責任と自社の政治的関与との整合性をとり、自社の事業とバリューチェーンで発生している最も深刻な人権問題への対応をさらに深化させるよう求められる。

 イニシアチブの諮問委員会のメンバーにはストアブランド・アセット・マネジメント、ロベコ、ハーミーズ・エクイティ・オーナーシップ・サービシーズ(EOS)およびオランダ小売業年金基金(Pensioenfonds Detailhandel)の代表者が名を連ねており、エンゲージメント活動の戦略的な方向性、助言や指針を示すほか、非公式の大使としての役割を担う。

 PRIの署名機関は、6月10日までに同イニシアチブを承認するか、(主導または協調する投資家として)参加するかを表明する必要がある。

 エンゲージメント対象セクターの選定にあたっては、諮問委員会と技術諮問グループとの協議を行い、さらなる調査を実施した結果、金属・鉱業および再生可能エネルギーセクターに決定した。

 金属・鉱業セクターは人権リスクが高いと認識されていることに加え、クリーンエネルギーへの移行に伴いその重要性が増していることが選定の理由となった。

 個別の企業についてみると、エンゲージメント対象に選ばれた理由は事業規模と地位、人権ベンチマークのスコア、係争中の案件などから地域の多様性確保に至るまで広範囲にわたっている。

 RIは4月29日、米証券取引委員会が資源大手ヴァーレに対し、2019年1月に270人の死者を出したブルマジーニョ尾鉱ダム決壊事故の3年前からダムの安全性について投資家の誤解を招く主張を行っていた旨で起訴したことを記事にした。

 再生可能エネルギーセクターをエンゲージメント対象にした根拠として、再生可能エネルギーへの移行をめぐるリスクと適合性の問題のほか、同セクターはこれまで社会問題や人権についてさほど厳しい監視を受けてこなかったという事実が挙げられる。

 エンゲージメント対象となった企業は、風力・太陽光発電事業の運営者、開発者、権利保有者などである。中には、「国有企業であっても、同セクターに関わる主な国・地域である」との理由から選ばれたものもある。

 風力・太陽光発電事業に参画する製造業者は、「バリューチェーンにおける製造業の部分は既に投資家による人権問題への取り組みが進んでいる」ことから除外された。

 イニシアチブの活動方法の説明文には、「PRI幹部は2つの諮問委員会と幅広い投資家ワーキンググループと連携し、Advanceがエンゲージメント対象とする各セクターの移行戦略を設計する。それらの戦略は当該セクター内で特定された個別の深刻な人権リスクに焦点を当てるもので、PRI幹部は参加メンバーと連携して戦略を実施し、これらセクター内での個別の人権問題をめぐる対応を変えるよう促していく」と記されている。

今後の動き

 PRIのウェブサイトによると、イニシアチブに参画する投資家が増え、PRI内のチーム増員が進めば、エンゲージメント対象企業の数は増加する見通しである。

 さらに、エンゲージメント対象企業のリストに含まれない企業で人権をめぐる係争が発生すれば、審査を経て新たな企業エンゲージメントグループが立ち上げられる可能性もある。

 「その場合のエンゲージメント活動は問題の軽減に重点を置くことになる。すなわち、当該企業が影響を受ける全てのステークホルダーと協議した上で改善計画を策定したことを再確認する。また、同企業が得た教訓を生かし、既存の業務プロセスの見直すことで同様の係争の再発防止を図ることも再確認する」とPRIは述べている。

 エンゲージメント活動は今年9月から開始され、少なくとも5年間続く予定である。2年目には、政策当局がエンゲージメント対象に含められる可能性もある。

 RIはエンゲージメントの対象とされた企業にコメントを求めている。


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【参照】
Responsible Investor,  Gina Gambetta「Mining and renewables firms set for scrutiny in PRI human rights initiative」2022年5月6日(2022年5月16日情報取得)


QUICK ESG研究所