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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 国連が支援するイニシアチブ「責任銀行原則(PRB)」は、同原則を遵守しない署名機関を除名する制度の導入を決議した。

 PRBには現在180を超える銀行が署名しており、その資産総額は世界全体の銀行の3分の1以上に相当する。PRBは2019年9月に発足し、銀行にパリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)など幅広い社会的目標に沿ったファイナンスを促すことを目指している。

 7月に決議された新たなガバナンスの制度では、PRBが取り決めた3つの「重要ステップ」(インパクト分析、目標設定と実行、説明責任)を遵守しない署名機関は除名の対象となる。

 国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)の銀行部門を率いるシモーヌ・デットリン(Simone Dettling)氏はRIの取材に対し、除名対象となるのは目標を達成できなかった署名機関ではなく、「目標達成のための戦略に明らかに矛盾する事業判断を繰り返している、または、説明もないまま、自ら宣言した表明を果たすための取り組みや行動計画を継続して実行に移さない署名機関である。該当する銀行に対してはエンゲージメントを行い、除名するか最終的に判断する」と語った。

 一方で、「我々は署名銀行に野心的な目標を設定することを期待している。野心的な目標を達成できない銀行は除名する、と脅すことは逆効果に繋がる」とも述べた。

 新たなガバナンス制度の下では、12名の委員からなる「市民社会諮問委員会(Civil Society Advisory Body)」を設置した。委員はこれから選出する。

 デットリン氏は、同委員会の役割は全署名機関の活動の進捗状況を監視し、「独立した立場」から見解を示すことにあり、UNEP FIが隔年で発行する評価報告書「Collective Progress Report」について第三者評価を提供するという。

 さらに同委員会は、原則の枠組みが最新のグローバルな持続可能な目標に整合するよう支援し、署名機関向けに原則の改訂内容についてアドバイス/サポートする役割も担う。

 今年9月の銀行理事会の理事選挙が終わり次第、同委員会への参加募集を世界中で始めるという。

 同委員会は、世界5つの地域(北米、中南米、欧州、アフリカ&中東、アジア太平洋)を代表する市民社会組織がそれぞれ選ばれる。更に、気候変動、生物多様性と生態系、人権とジェンダー、貧困と社会問題、透明性と説明責任といった各課題の専門性を持つ5つの組織が選出される。残り2席は、銀行の顧客と従業員の代表者がそれぞれ就く。

 デットリン氏は、市民社会諮問委員会の募集は透明性の高い開かれたプロセスで実施するものの、新興国を代表する組織の選定は、他地域に比べて難航するとの見方を示した。

 UNEP FI事務局は、2021年以降、署名機関の年次報告書の分析を開始し、原則に沿った目標と実行計画が遵守されているかチェックする。

 何らかの問題が見つかった場合はまず事務局が対処し、問題を解決するよう当該銀行に働きかける。事態が改善しない場合には、銀行理事会(11名の銀行代表者と1名の国連代表者からなる)に報告される。

 銀行理事会によるエンゲージメントを経てもなお対応を怠った場合、当該署名機関はPRBから除名されるか、将来的に当該銀行が問題を解決する可能性が十分にある場合は、加盟資格を停止される。

 一方、責任投資原則(PRI)は、2年にわたるエンゲージメントを経てもなお最低履行要件を満たしていない署名機関の除名に踏み切る予定だ。8月に機関名を公開するという。除名機関はその後1年間は再加盟を認められない。

 他方、欧州のNGO「Europe Beyond Coal」は、英バークレイズ、仏BNPパリバ、伊ウニクレディトなどの欧州銀行が欧州トップ8の石炭火力発電企業に投融資している状況を示すレポート「Fool’s Gold – The financial institutions risking our renewable energy future with coal」を発表した。これら8社のCO2排出量は、EU域内の石炭由来の総排出量の半分を占めている。

 石炭関連事業への投融資額が最も大きいのはユニクレディトで、2018年に国連の科学者が気候変動による最悪のシナリオを避けるために残された猶予期間は10年しかないと警告を発したあとも、この分野で総額280億ユーロに上る融資および引受業務を行ってきた。


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【参照】
Responsible Investor, Paul Verney 「Principles for Responsible Banking members sign off on delisting mechanism」2020年7月15日(2020年8月11日情報取得) 

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