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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道氏(理事 兼 CIO)は、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)にアセットオーナーが協調し運用会社に対する実績連動報酬の導入を働きかけ、これを「業界慣行にするよう」呼びかけた。水野氏は8月20日、CalPERSのベン・メン(Ben Meng)CIOおよびアン・シンプソン(Anne Simpson)Director of Board Governance & Strategyと共に出席したCalPERSの投資委員会で発言した。同委員会ではAI、ESG、透明性がもたらすメリットなど、幅広いテーマについて議論が交わされた。

運用報酬

 GPIFは昨年、運用受託機関のアラインメントを強化する目的で、アクティブ運用を行う機関に対して新たに実績連動報酬を導入し、複数年契約を締結した。水野氏は、これに対し多くの異論があったことを認めつつ、過去の実績をみる限りアクティブ運用から得られたアルファ(超過収益)は報酬分を差し引くとゼロに等しいと指摘した。これまでGPIFはアクティブ運用マネジャーの選定作業に内部のリソースの80%を振り向けていたとし、「勝者になるためには、ゲームのルールを変更する必要があった」と説明した。昨年はGPIFが運用委託するアクティブ運用マネジャーの大半が目標超過収益率を達成できなかったため、2億ドル相当の運用報酬を抑制したという。

 水野氏は、「約束どおりの成果を出せなかったアクティブ運用マネジャーに運用報酬を支払うべきではない」と発言し、拍手を浴びた。GPIFが過去に委託したアクティブ運用マネジャーのうち実際に目標超過収益率を達成したのは全体の18%にとどまる。アクティブ運用を行う46の機関のうち43が新たな報酬体系を受け入れた。これに同意せず契約更新を拒否した3つの機関と協議した際、「ある運用マネジャーは、目標超過収益率の達成は当初から難しいとみていたことを明かしたため、そうであれば2年前に告げてほしかったと言い返した」と述べて会場の笑いを誘った。別の運用マネジャーは新たな報酬体系の趣旨には同意するが、他のアセットオーナーとは「もっと楽に報酬を稼げる」契約を結んでいると話した。こうした経緯から、水野氏はアセットオーナーに連携を呼びかけ、GPIFの報酬体系を「業界慣行にする」ことを目指している。

透明性

 GPIFのCIOに就く前、水野氏は証券業界で名の知れた存在だった。「私が民間投資会社のジェネラル・パートナーを務めていた頃、徹底した情報開示を行うCalPERSのことを煙たく思っていた」と述べ、透明性を高めるのはよいが、投資運用チームにハンディキャップを負わせることになると指摘した。

「GPIFの一員となった今は、運用委託先のジェネラル・パートナーに対して、我々も全ての情報を開示する方針である旨を伝えている。CalPERSだけがこれを実践する場合はマイナスに働くかもしれないが、我々もこれに加わり、その輪が他にも広がれば、市場のスタンダードになる」と同氏は述べ、アセットオーナーは透明性に関して「より戦略的」なアプローチをとるべきだと指摘した。「GPIFとCalPERSが連携すれば、市場に影響を及ぼすことができる」とも述べた。

AI(人工知能)

 水野氏は「AIが人間の仕事の多くをこなすようになることが、最終的にプラスなのかマイナスなのかは分からない」と述べ、馬に代わって自動車が登場した時代になぞらえつつ、「当面は、AI利用によって勝者と敗者の両方が生まれるだろう。ただ、AIがビジネスに及ぼす影響は人々の想像以上に大きいはずだ」と予想する。さらに、GPIFがソニーコンピュータサイエンス研究所と連携してアセットマネジャーの投資行動をモニタリングしていることに触れ、「投資業界ではAIとの協働・連携が可能な分野がなお多く存在する。考えてみると、この業界には数百万ドルのボーナスを稼ぐ人材がいるが、そうした高報酬はいずれ維持できなくなることは間違いないだろう」とも述べた。

ESG

 水野氏は、「GPIFは究極のESG投資家であることに全力を注ぎ、資本市場全体を持続可能にすることを目指している」と話した。ESGをめぐるGPIFの対応は全て、資本市場全体を持続可能にすることにつながる。従って、GPIFやCalPERSのようなユニバーサルオーナーは、市場をアウトパフォームすることを目指すべきではない。「10年ごとに発生する金融危機は、アセットオーナーが得たアルファを吹き飛ばしてしまう。だからこそ重要なのはベータである」と同氏は述べた。その上で、GPIFのポートフォリオ全体の温室効果ガス排出量は3℃シナリオを上回る水準であることを認め、これを是正すべく保有する化石燃料関連企業の株式を売却することは「安易な解決法」と言える、と説明した。むしろユニバーサルオーナーとして、「市場全体が持続可能となるまで満足すべきではない。GPIFのESGへの取り組みがポートフォリオに付加価値をもたらすことをわずか1ヵ月で証明することは極めて困難、3年でも難しいかもしれない。それでも30年後には、こうした取り組みが多大な影響を及ぼすことを確信している」と語った。


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【参照】
Responsible Investor, Daniel Brooksbank 「Japan’s giant GPIF to CalPERS: Let’s get together on asset management fees, transparency」2019年8月21日(2019年9月12日情報取得)


QUICK ESG研究所