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 米国連邦議会では、国家予算と移民法、とりわけDACAをめぐり、民主党議員と共和党議員の交渉が続いている。1月20日までに解決の合意に至らなかったために国家予算案の採択ができず、連邦機関の一部が3日間閉鎖される事態となった。

 子供の時に親に連れられて米国で不法移民となり、そのまま米国で暮らす若者に対する強制退去処分を猶予する制度(DACA)は、オバマ前米政権により2012年に導入された。トランプ大統領は昨年9月、DACAを2018年3月に打ち切ると宣言した。DACAに登録した移民はアメリカン・ドリームの精神を汲んで「ドリーマー」と呼ばれているが、その数は80万人を超えるという。不法移民の親を持つドリーマーはDACAの利用にあたり、これまで移民局の目を逃れてきた家族を危険にさらすリスクと、合法的に米国に住み仕事ができる恩恵とを天秤にかけ、登録に踏み切っている。DACAが打ち切られると、ドリーマーだけでなくその家族も国外追放のターゲットになることは間違いない。

 筆者の住むカリフォルニア州をはじめ15の州は、2017年9月に、DACA打ち切りは違憲であるとして連邦政府を訴えている[1][2]。白人の数を上回る1500万人以上のラティーノ系中南米移民が住むカリフォルニアでは、トランプ大統領の就任が確定した時から、ラティーノ系移民が多く住む界隈の雰囲気が一転した。住居が狭く家族の人数も多いラティーノ系移民は、天気の良い日には路上で近所づきあいを楽しんできたが、職場や学校への往復以外は家の外に出なくなった。子供たちが通う学校では、親がいない時にアパートの呼び鈴を押す人が来ても絶対に扉を開けないようにと指導されているという。マリン郡に限らず、全米各地で移民の子供たちの不登校が増えていると聞く。ドリーマーになる資格のある子供や、米国で生まれたためにアメリカ人である子供でも、不法移民である親がICEと呼ばれる連邦移民局執行官[3]に捕まり、前触れもなく離ればなれにされることを恐れている。BBCのサイトには、職場に突然ICEが現れて刑務所に連行される事件が度重なり、学校にも仕事場にも行かなくなる人が増え、すっかり変わってしまったワシントン州パシフィック郡の街の様子を収めたドキュメンタリーが掲載されている[4]。トランプ支持者の多かったこの郡で、予期しなかった影響を後悔している様子は感慨深い。

 北カリフォルニアでは1500人に上る不法移民の逮捕をICEが計画していると報道されているが[5]、サンフランシスコやオークランドの警察はICEへの非協力を宣言している。

 州政府や警察だけでなく、マイクロソフト社、プリンストン大学、カリフォルニア大学などの企業や大学も、DACA打ち切りが違憲であるとして連邦政府を訴えている[6]。アメリカン・ドリームを支持する連名「The Coalition for the American Dream」には、アマゾン、フェイスブック、インテル、ウーバー、IBM、グーグル、マリオット・インターナショナル等、複数のテクノロジー系企業が加盟している。訴訟には踏み切らないまでも、ドリーマーに夢を与えておきながらまた取り上げることは有能な人材の損失につながり、米国の成長に悪影響を及ぼすとして、ドリーマーの永住権獲得に向けたロビー運動をしている[7]

 筆者自身、幼少時に米国に暮らした経験があるが、様々な人種の子供たちと一緒に学校に通い、自分の国籍を意識したことがなかった。大人になり大学院で再び渡米し、職探しをする時になってはじめて、国境や就労ビザの存在を認識したのを覚えている。ビザ取得、永住権取得を経てアメリカ国籍を得るのに年月と努力をかけたこともあり、合法的な移民をするべきであると信じる反面、親に連れられて子供の頃に渡米したドリーマーを今更追放し、なじみのない出身国での生活を強いるのは理不尽に思えて仕方がない。


[1] Los Angels Times「California sues Trump administration over decision to end DACA protections for young immigrants」2017年9月11日(2018年2月7日情報取得)
[2] Chicago Tribune「15 states, D.C. sue Trump administration over ending DACA」2017年9月6日(2018年2月7日情報取得)
[3] U.S.Immigration and Customs Enforcementウェブサイト(2018年2月7日情報取得)
[4] BBC News「The missing - consequences of Trump's immigration crackdown」2018年1月15日(2018年2月7日情報取得)
[5] san francisco chronicle「Bay Area police unlikely to help ICE on immigration sweeps」2018年1月17日(2018年2月7日情報取得)[6] the seattle times「Microsoft joins Princeton in suit against U.S. to stop termination of DACA」2017年11月13日更新(2018年2月7日情報取得)
[7] GeekWire「Report: Tech titans are forming a coalition to lobby Congress on behalf of ‘Dreamers’」2017年10月20日更新(2018年2月7日情報取得)


Mari Kawawa QUICK ESG研究所