先日、シリコンバレー企業の性差別やセクシャルハラスメントが問題化していると書いたが(「シリコンバレーの性差別やセクシャルハラスメント問題」)、それに関連するカンファレンスがカリフォルニア大学バークレー校で開催されたので出席してきた[1]。Towards Inclusive Techと題したカンファレンスは、バークレーの情報大学院と、同ビジネススクール(経営大学院)の「性、平等、リーダーシップセンター(Center for Gender, Equity, and Leadership :CGEL)」が共催した。シリコンバレー企業による女性差別は旧来から業界風土としてあったものの、近年、大手ベンチャーキャピタルを相手取ったセクハラ訴訟等で表面化してきた経緯がある。このようなニュースが報じられはじめ、カリフォルニア大学バークレー校のエンジニア系学生やコンピューターサイエンス専攻の学生の間にも、「マッチョ」な風土に嫌気がさして就職活動を躊躇する傾向が現れているという。

カンファレンスの写真

 カンファレンスは、研究者やシリコンバレーにあるテクノロジー企業のD&I担当者が問題提起と対策について話し合う場で、ここではD&Iと言う用語が頻繁に使われた。D&IはDiversity and Inclusionの略であり、周辺地域の人口に占める割合と比較した時に組織内における人口割合が不充分な女性や(人種・身障者・性的指向等の)マイノリティーの登用を奨励し、組織に受け入れられていると思える環境を作ることを目指している。シリコンバレーという特殊な環境のなかで誰もが平等な扱いとチャンスを得られるよう、営利・非営利団体が活動しはじめている。Project Includeはセクハラ訴訟で敗訴した元ベンチャーキャピタリストのエレン・パオ氏が設立した非営利団体で[2]、企業が体系立ててインクルージョンを奨励する仕組みを作ること、そして経営陣以下の各人にこれを遵守する責任を課すことを呼びかけている。

 同時にこのような問題を野放しにしてはいけないと積極的に努力している企業もいる。インテル社は2015年に、米国従業員に関して周辺地域の人口に占める割合と組織内の人口に占める割合が同等になるよう、2020年までに女性や人種・身障者・性的指向等のマイノリティーを雇用し、かつ組織に受け入れられていると思える環境を作ることを宣言した。そして、これが単なる広報のための帳尻合わせでないことを強調するために、5つの分野に注力し、3億ドルの予算を充てると発表した[3]

1)   雇用と人事留保により、米国従業員に関して周辺地域の人口に占める割合と組織内の人口に占める割合が同等になるよう、女性や人種・身障者・性的指向等のマイノリティーの雇用を達成する。

2)   産業全体の人材確保に努める。

3)   サプライチェーンやベンダーのダイバーシティを改善する。

4)   新進テクノロジーの起業に投資するにあたり、投資対象の起業家のダイバーシティを改善する。

5)   ゲーム分野で活躍する女性を支援する。

 カンファレンスに出席したインテル社のD&I部長ジョセフ・ニセンギマナ氏によれば、従業員各人の報酬はこれらのゴールに寄与した度合いに応じて決まるため、まさに全社あげての改善が進み、予定より2年早い2018年には目標を達成する見込みであるという[4]。同氏によれば産業全体では12億ドルをD&Iに投資しているが、D&Iの現状と改善の度合いを公表するシリコンバレー企業は全体の10%にも満たず、インテル社はD&Iの進捗を毎年公表することにより産業のロールモデルともなっているという。

 インクルージョンと言う概念も、誰もが居心地よく組織に受け入れられていると感じられると言うことに留まらず日々進化しているというが、組織に携わる人間のモチベーションを高め、多様な観点から問題に取り組むことが企業の利益増加につながることはすでに各種研究で明らかになっているという。

 いじめや引きこもりの問題が絶えず、320万人が精神疾患により医療機関にかかっている日本には[5]、責任の所在を明確にするダイバーシティ&インクルージョンが必要であり、企業のトップ経営陣および取締役会によるトップダウンの努力が必要ではなかろうか。


[1] Berkely school of information「Conference:Towards Inclusive Tech」(2017年11月8日情報取得)
[2] Project Include(2017年11月8日情報取得)
[3] Intel「INTEL NEWS FACT SHEET:Intel Diversity in Technology Initiative」(2017年11月8日情報取得)
[4] Intel「Intel Diversity and Inclusion Mid-Year Report」(2017年11月8日情報取得)
[5] 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス~精神疾患のデータ~」(2017年11月8日情報取得)


Mari Kawawa QUICK ESG研究所