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 最近シリコンバレー企業の性差別やセクシャルハラスメントが問題化している。今年8月にはグーグル社の男性従業員の書いたメモがマスコミにリークされ、大きな波紋を起こした。「テクノロジー分野やリーダーシップで男女同数がみられないのは、男女の能力差が生物的な違いによるところもあることに起因するから」と言う部分がとりわけソーシャルメディアで叩かれた。グーグル社は、さっそくこの男性従業員を解雇処分にしたが、CEOのサンダー・ピチャイ氏の社内向けメモが印象的だ。社内での言論の自由を擁護し、問題となったメモの内容については議論に価する点も多いと評価した上で、「一部従業員が職務遂行に生物的に適していないというのは失礼であり、容認できない」ことであり、嫌がらせ、脅迫、偏見、違法な差別のない職場文化を心がける会社の行動規範に反する内容だと断言している[1]

 また今年7月、シリコンバレーの投資会社500スタートアップス社の共同創立者デビッド・マクリュアー氏は、ニューヨーク・タイムズ紙が同氏による複数の女性へのセクシャルハラスメントを報じた[2]ことを受け、「私は変態です。ごめんなさい」と告白して辞任した[3]。シリコンバレーのダイバーシティを支援してきた500スタートアップス社であるだけに、業界に少なからず衝撃を与えた。この種の話題は、ウーバー社でも、元CEOを筆頭に20人の従業員がセクシャルハラスメントの風土に寄与したとして辞任・解雇されたのをきっかけに、芋づる式に浮上してきている。起業家やベンチャー・キャピタリストがスター的な存在としてもてはやされるシリコンバレーに酔いしれて、一線を超えてしまった愚かさが情けないが、リンクドイン社の共同創立者リード・ホフマン氏を中心にこのような風土を容認しない「良識宣言」が公開され[4]、シリコンバレーの風土・倫理の改善が促された。ベンチャー・キャピタリストと投資を募る起業家の関係は、企業の上司と部下の関係、もしくは大学の教授と生徒の関係となんら変わりはなく、ビジネスと恋愛関係は相容れないものと断言している。また、このような良識を無視あるいは気にとめないベンチャー・キャピタル企業とはビジネスをすべきではないと忠言している。

 現在米国には、女性エンジニアは全体の14%しかいないが、1980年代の6%弱に比べると伸びてきている[5]。米国の新進女性起業家は40%に上るというが、年商50万ドル以上の「高度経済効果」のある企業を運営する女性起業家は全体の3%に過ぎないという[6]。S&P500社の中でも、女性CEOは全体の5.2%だ。男女平等が謳われてきて久しいが、「男女の能力差が生物的な違いによる」と考える人がいる限りはなかなか状況は改善されないであろう。


[1] BBC「Google fires diversity memo author」(2017年10月25日情報取得)
[2] The New York Times「Women in Tech Speak Frankly on Culture of Harassment」(2017年10月25日情報取得)
[3] SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL「500 Startups' Dave McClure confesses: 'I'm a creep. I'm sorry'」(2017年10月25日情報取得)
[4] Linked in「The Human Rights of Women Entrepreneurs」(2017年10月25日情報取得)
[5] ASME:THE AMERICAN SOCIETY OF MECHANICAL ENGINEERS「Engineering Still Needs More Women」(2017年10月25日情報取得)
[6] CNBC「Why women entrepreneurs will be the economic force to reckon with in 2017」(2017年10月25日情報取得)
 

【2017年11月6日 お知らせ】
筆者による本ブログに関連するテーマの記事が下記に掲載されました。
Financial Planning「Voices:Where women advisors may finally thrive」2017年10月20日(※要:無料会員登録)


Mari Kawawa QUICK ESG研究所