今年のハリケーン・シーズンには、米国南部およびカリブ海に浮かぶ島々に次々とハリケーンが上陸し、巨大な被害をもたらした。

 大型ハリケーン第一号のハリケーン・ハービーは8月下旬から9月初頭にかけて米国本土に上陸した。大型ハリケーンの米国上陸は2005年以来である。ハリケーン・ハービーは、上陸時点でカテゴリー4の風速210キロメートルに及ぶ暴風雨でテキサス州南東部とルイジアナ州南西部に1300ミリメートル以上の降水をもたらした。人口239万人で米国第4位の都市であるヒューストンも図1のような洪水被害を受けた。ハリケーン上陸から1ヶ月弱経た9月末でも3万人以上が自宅に戻れず、28万人が電気を使用できていなかった[1]。ヒューストンは3年連続で大雨による洪水被害を記録しており、今回はヒューストンを含むハリス郡一帯で多大な浸水被害が発生している。

 ヒューストンはメキシコ湾に面した都市で、海面上昇による浸水リスクの高い都市としても知られており、連邦政府とテキサス州・ハリス郡によって浸水被害が発生する住宅地の買い取りを、1985年から行っているところでもある[2]。これまでに図2の赤く塗られた3,000件に上る住宅が自主的に買取申請をして移住しており、これらの地域を自然の沼地に戻すことにより、浸水被害を防いでいる。連邦政府その他の自治体にとっても、救済費用を捻出するよりも自主的な買取に応じる方が安上がりだという。

図1 ヒューストンの浸水被害マップ

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出所:Harris County Flood Control District「harvey-estimated-maximum-riverine-inundation.pdf」(最終閲覧日2017年10月10日) 
 

図2 浸水被害防止のための住宅地買い取りマップ

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出所:Harris County Flood Control District「HOME BUYOUT PROGRAM」 (最終閲覧日2017年10月10日) 

 

 一方、カリブ海に浮かぶ島々はハリケーン・ハービーが去ったと思いきや、ハリケーン・イルマ、ハリケーン・マリアが次々に襲来した。特に同海域の米英バージン諸島、米国領土のプエルトリコ、ドミニカは、過去百年で最大のハリケーンに直撃された。人口340万のプエルトリコでは全島が一時停電し、未だに島の70%が上水道が使えない生活を送っている。地上の楽園と謳われているセント・クロア島、セント・トーマス島、タークス・カイコス諸島等も、相次ぐハリケーンの襲来で多くの人命や家屋を失い、救急物資の配達も滞っている[3]。トランプ米国大統領は米国領土のプエルトリコとバージン諸島を災害地域に認定し、連邦緊急事態管理局FEMAが中心となって救済活動を行っている[4]

 ハリケーン・ハービー、ハリケーン・イルマ、ハリケーン・マリアによる米国本土の被害総額は1500億から2000億ドルと推定されており、完全復興までには3年かかると言われている[5]

 気候温暖化がハリケーン増加の一因として挙げられることがあるが、これを裏付ける確固たる科学的な証拠はない。また、大西洋上で発生するハリケーンの数が、ここ30年で増加していると言う説に対しては、観測技術の向上によって検知されるハリケーンの件数が増加しているためだ、というのが定説となっている[6]

図3 大西洋におけるハリケーンの発生数の推移

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出所:GFDL「Historical Changes in Atlantic Hurricane and Tropical Storms」(最終閲覧日2017年10月10日)
 

2017年10月10日 内容の一部を修正しました。


[1] CNBC「Underwater metropolis: Photos of Houston before and after historic flooding」(最終閲覧日2017年10月10日)
[2] Harris County Flood Control District「HOME BUYOUT PROGRAM」 (最終閲覧日2017年10月10日) 
[3] Guardian News「How the Caribbean islands are coping after hurricanes Irma and Maria」(最終閲覧日2017年10月10日)
[4] アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁 (最終閲覧日2017年10月10日)
[5] FORTUNE「The Hidden Costs of Hurricanes」(最終閲覧日2017年10月10日)
[6] GFDL「Historical Changes in Atlantic Hurricane and Tropical Storms」(最終閲覧日2017年10月10日)


Mari Kawawa QUICK ESG研究所