ビジネスにおける人権は、国際的な重要課題の1つである。日本では、日本労働組合総連合会(連合)をはじめとする官民の労働組合が雇用者の権利を守るための活動をしている。しかしながら、労働組合員数は減少傾向にあるというのが現状だ。

 2017年6月20日、厚生労働省は、「平成28年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況」を取りまとめ、公表した。昨今、団塊世代以降の定年退職者が増加する一方で、雇用者数が逓増傾向にあるのは、正社員以外の労働者(パートタイム労働者等)が増えていることによる。加入資格を正社員に限定している労働組合が多い中、その影響は労働組合員数等にも表れている。労働組合員数は1994年をピークに減少傾向をたどっており、併せて推定組織率も逓減傾向にある。

 雇用者数の30%以上を正社員以外の労働者が占めている現状において、労働組合の組織拡大には、正社員以外の労働者を加入させることが解決策の1つであろう。しかしながら、正社員以外の労働者にとって労働組合加入のハードルは高い。現在、同一労働同一賃金に向け、法整備の準備が進められているが、労働組合加入もその延長線上で考えうる課題であろう。

 以下、「平成28年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況」および補足として「平成28年労働組合基礎調査の概況」のポイントをまとめた。

労働組合活動等に関する実態調査について

 「労働組合活動等に関する実態調査」は、労働環境が変化する中での労働組合の組織および活動の実態等を明らかにすることを目的としている。対象は、民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合(単位組織組合並びに単一組織組合の支部等の単位扱組合及び本部組合)で、2016年6月30日現在の状況等について同年7月に調査し、一定の方法により抽出した 5,097労働組合のうち 3,246 労働組合から有効回答を得た。

調査結果のポイント

1.労使関係についての認識(本部組合及び単位労働組合)
 労使関係が「安定的」(注1)と認識している労働組合は 89.5%(前回(注2)87.8%)であった。

2.労働組合員数の変化に関する状況(単位労働組合)
 3年前(2013年6月)と比べた組合員数の変化をみると、「増加した」34.1%(前回(注3) 30.1%)、「変わらない」22.2%(前回(注3)22.1%)、「減少した」41.7%(前回(注3)47.1%)であった。
 組合員が増加した理由としては、「新卒・中途採用の正社員の組合加入」82.7%(前回(注3)74.4%)が最も高く、次いで「正社員以外の労働者の加入」18.7%(前回(注3)14.0%)となっている。組合員が減少した理由としては、「定年退職」および「自己都合退職」が高い。

3.労働組合の組織拡大に関する状況(単位労働組合)
 組織拡大を重点課題として「取り組んでいる労働組合」は 31.9%(前回(注4)34.1%)、「取り組んでいない」66.0%(前回(注4)65.8%)であった。
 産業別にみると、「医療、福祉」が最も高く70.0%(前回(注4) 57.1%)、次に「教育、学習支援業」が56.3%(前回 (注4)61.6%)となっている。
 取組対象として最も重視している労働者の種類についてみると、「新卒・中途採用の正社員」47.1%(前回(注4)36.7%)、次いで「パートタイム労働者」17.8%(前回(注4)13.2%)であった。

4.正社員以外の労働者に関する状況(単位労働組合)
 労働者の種類別に「組合加入資格がある」をみると、「パートタイム労働者」32.3%、「有期契約労働者」35.6%、「派遣労働者」11.1%、「嘱託労働者」30.7%であった。
 産業別にみると「医療、福祉」が、どの労働者の種類でも総じて高く「パートタイム労働者」74.9%、「有期契約労働者」 68.5%、「派遣労働者」32.2%、「嘱託労働者」62.3%となっている。
 過去1年間(2015年7月1日から2016年6月30日)に、正社員以外の労働者について使用者側と話し合いが持たれた事項を見ると、「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」33.0%(前回(注2)35.3%)と最も高く、次いで、「正社員以外の労働者(派遣労働者を含む)の正社員への登用」24.1%(同24.2%)となっている。

5.労働組合活動の重点事項
 「賃金・賞与・一時金」91.5%が最も高く、次いで「労働時間・休日・休暇」78.3%、「組合員の雇用の維持」43.2%となっている。

6.労働組合費
 1人平均月間組合費は、3,574円となっており、企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど組合費は概ね高くなっている。

注1: 労使関係の維持についての認識は5段階の選択肢であり、「安定的」は「安定的に維持されている」と「おおむね安定的に維持されている」の合計
注2: 「前回」とは平成 27 年「労使間の交渉等に関する実態調査」を指す
注3: 「前回」とは平成 20 年「労働組合実態調査」を指す
注4: 「前回」とは平成 25 年「労働組合活動等に関する実態調査」を指す

補足:平成28年 労働組合基礎調査の結果について(2016年12月15日 厚生労働省公表)

 この調査は、労働組合、労働組合員の産業別、企業規模別、加盟上部組合別にみた分布状況など、労働組合組織の実態を明らかにすることを目的としている。すべての労働組合を対象とし、毎年6月30 日現在の状況について7月に調査し、集計している。

調査結果のポイント

  1. 労働組合員数は 994万人で、前年の988万2千人より5万8千人(0.6%)増加している。なお、労働組合員数のピークは1994年の1,269万9千人であり、長期的にみて減少傾向にある
  2. 雇用者数5,740万人と比較する推定組織率(注)は 17.3%で、前年の17.4%より0.1ポイント低下し、過去最低となった。推定組織率は1983年に30%を割り、その後低下傾向にある
  3. 女性の労働組合員数は319万2千人で、前年の312万人より7万2千人(2.3%) 増加している。雇用者数2,544万人と比較する推定組織率(注)は 12.5%で、前年と変わっていない
  4. パートタイム労働者の労働組合員数は113万1千人で、前年の102万5千人より 10万6千人(10.3%)増加している。全体の労働組合員数に占める割合は11.4%で、前年の10.4%より1.0 ポイント上昇している。雇用者数1,517万人と比較する推定組織率(注)は 7.5%で、前年の7.0%より0.5ポイント上昇し、いずれも過去最高となった。パートタイム労働者の労働組合員数および推定組織率は、増加傾向にあるが正社員の推定組織率には大きく劣後している
  5. 産業別状況
    労働組合員数を産業別にみると、「製造業」が262万2千人(全体の26.5%)と最も多く、次いで「卸売業、小売業」が138万6千人となっている。
    推定組織率を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が69.0%と高く、他方「農業、林業、漁業」は1.7%、「不動産業、物品賃貸業」は3.0%と低い。

(注)推定組織率は、雇用者数に占める労働組合員数の割合をいい、本調査で得られた労働組合員数を、総務省統計局が実施している「労働力調査」の雇用者数(6月分の原数値)で除して計算している

 

【参考資料】
平成28年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況(2017年6月20日 厚生労働省)
平成28年労働組合基礎調査の概況(2016年12月15日 厚生労働省)


QUICK ESG研究所 菅原 晴樹