全米レストラン協会によれば、米国の2016年の外食産業のトレンド第一位はサステナビリティだという[1]。同協会では毎年、会員のプロの料理人を対象に、レストランで提供している料理や飲み物、外食業界のトレンドについて調査している。2016年の調査では、肉や魚介類のローカル・ソーシング(地元からの供給)の他、食品廃棄物の削減や環境のサステナビリティが目下の関心事であるという結果が出た[2]。また、魚介類のサステナビリティも関心事の上位にランキングされている。外食に期待することは、プロの味付けだけではなく、どこでどのように栽培された野菜・果物なのか、どこでどのように育てられた肉・魚介類なのか、環境への悪影響はないのか、種の存続に配慮しているのか等々、こだわれば切りがない。2017年の外食産業のトレンドのトップ10には超地産地消、自然食材、環境のサステナビリティ、食品廃棄物の削減などがリストアップされており[3]、このトレンドが続いていることがわかる。

 昨年初めて家庭の外食支出が内食支出を上回った米国[図1]では、レストランによるサステナビリティの追求が、消費者からの要望に応えるものなのか、それともプロの料理人の心意気なのか定かではないが、サンフランシスコ界隈ではFarm to Table(農場から食卓へ)を謳ったレストランが大人気である。ホワイトカラー層にとっては、レストランでオーガニック食材や産地のうんちくを語るのがちょっとしたステータスにさえなりつつある。季節の旬の野菜やきのこを使った料理を求めて遠出するのも贅沢な時間の過ごし方となっている。

グラフ

図1 青:内食支出 赤:外食支出 出所:Bureau of the Census(アメリカ合衆国国税調査局)

 カリフォルニア州バークレーにあるChez Panisse[4]は、地元で採れた旬のオーガニック食材を使った料理やスローフードを普及させたレストランとして知られている。1971年、アリス・ウォータース氏とその友人が1971年に開店し、今では、全米で最も予約の取れないレストランと言われている。創業者たちの理念は、自宅に友人を招いてディナーを催すかのように旬の食材を使い、しかも環境に悪影響を及ぼさないように配慮しようというものである。そういう意味では昨今の外食産業でのサステナビリティや食材の品質にこだわるトレンドは、40年以上も前、すでにバークレーで始まっていたと言えよう。

 州レベルでは、外食産業の食品廃棄物に対する規制も強化されている。カリフォルニア州では、今年4月から食糧廃棄物を普通ゴミと分別し、コンポスト処理場に運送して肥料として再利用することが義務付けられた。他にもコネチカット州やマサチューセッツ州でも類似の規制が施行されている。食品廃棄物を再利用することにより、埋立地のゴミの量を抑えるとともに、これらのゴミによるメタンガスの発生を抑える目的がある。米国で生産される食品の30%から40%が消費されずにゴミとして無駄にされるというから、食品廃棄物の再利用は大きな効果が期待される。

 外食産業のサステナビリティに向けた取組みは素晴らしいが、一方で外食による塩分・脂肪・糖分の摂りすぎが問題視されている。とりわけ、貧困層のファストフード依存は肥満の原因として注目されている。貧困層がファストフードに依存する理由は価格である。2ドルでおなかがいっぱいになるハンバーガーは、お金に困窮する人々にはありがたい。オーガニックが良いと分かっていても、オーガニック食材は割高である。米国のオーガニック貿易協会によれば、2015年のオーガニック食材の売上げは390億ドルを上回り、1年前に比べてオーガニック食材を購入するようになったと答えた世帯は11%増加した。それでも、オーガニック食材の全米の食料品売上げに占める割合は5%である[5]。まだまだ伸びる余地はありそうだが、しばらくは財布に余裕のある人々の贅沢にとどまりそうである。安いファストフードを食べて育った子供たちは家庭で作る健康な食事を経験することなく育ち、大人になり、自らが子育てをする時にも食卓に手作り料理を出す習慣のないまま、悪循環となる。

 2010年12月、米国では、全米の学校給食の改善や子どもたちの飢えや肥満をなくす取組みに関する法「Healthy, Hunger-Free Kids Act(健康で飢餓に苦しまない児童法)」が成立した[6]。これを受け米国小児科学会は、子供をターゲットにしたファストフードのテレビコマーシャルの禁止を提唱した[7]。しかし、広く採用されず、2011年に唯一サンフランシスコ市がマクドナルドのハッピーミールについてくるおまけの無料配布を禁止したのみである。とはいえ年々、児童の肥満と健康への悪影響が問題視されるようになってきており、2014年には連邦政府レベルで校内におけるソーダ類・甘味飲料・ジャンクフードの販売を減らしていく方針を発表している。2000年初期には、大手ソーダ会社等による学校への寄付活動の対価として、ソーダの自動販売機の校内設置キャンペーンがあったが、ようやくそれを覆す動きが出てきている。

 肥満児の増加傾向は2003年から2015年の12年間で特に著しい。15%以上の学生が肥満傾向にある州の数は3から11に増えた。この傾向を改善するためには、行政、企業、学校、家庭、すべてが改善に向けて努力する必要があり、コストと時間を要するものと思われる[8]

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図2 州別、高校生の肥満傾向児の割合(2003年)

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図3 州別、高校生の肥満傾向児の割合(2015年)


[1] Looking for 2016's top food trends? Yep, sustainability!(2015年11月16日 全米レストラン協会)
[2] WHAT’S 2016 HOT CULINARY FORECAST(全米レストラン協会)
[3] WHAT'S HOT 2017 CULINARY FORECAST(全米レストラン協会)
[4] Chez Panisse HP
[5] U.S. organic sales post new record of $43.3 billion in 2015(オーガニック貿易協会)
[6] Healthy Hunger-Free Kids Act(アメリカ合衆国農務省(USDA))
[7] Familiarity With Television Fast-Food Ads Linked to Obesity(米国小児科学会)
[8] Adolescent Obesity Prevalence: Trends Over Time(Centers for Disease Control and Prevention)


Mari Kawawa QUICK ESG研究所