年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が3月30日、新たなESG指数である「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」を採用し、指数に基づくパッシブ運用を始めたと発表した。新指数の特徴と構成する493銘柄の株価騰落を見ていこう。

 新ESG指数の構成銘柄に選定された企業は4月に相次いで適時開示やプレスリリースで自社の選定を発表した。ほぼ連日、開示が続いたため、市場関係者の間で同指数の名が知れ渡ったとみられる。

 新ESG指数はFTSEのESGレーティングが各セクターの上位50%かつ2.0点以上の日本企業を選定。さらに「TPI(Transition Pathway Initiative)経営品質スコア」を利用して各企業の気候変動の取り組みを評価してふるい分けている。

 新指数のベースとなるのは「FTSE Japan All Cap Index」(2022年3月31日時点の構成銘柄数1395)で、この親指数に対応したウエート付けによってセクターの偏重を抑える「セクター・ニュートラル(中立)」を特徴としている。ESG評価の高い企業を選ぶと生じやすい偏りを最小化し、市場並みのリターンの獲得も目指す仕掛けが施されているわけだ。セクター分類には業種分類ベンチーマーク(ICB)が利用されている。

 3月30日時点の新ESG指数を構成するウエートの高い上位10銘柄をみると、トヨタ自動車(7203)が1位で、2位がソニーグループ(6758)、3位は日立製作所(6501)と、日本を代表する大企業が並ぶ。10銘柄のうち8位のオリエンタルランド(4661)以外はすべて日経平均株価の構成銘柄だ。新指数の493銘柄を調べたところ、日経平均を構成する225銘柄のうち195銘柄が選定されている。


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 新指数に選定された銘柄の大部分は、4月に再編された東京証券取引所の新市場区分ではプライム市場に属する。スタンダード市場所属なのは証券コード順に、日本オラクル(4716)、千代田化工建設(6366)、FDK(6955)、三菱ロジスネクスト(7105)、新生銀行(8303)の5銘柄。このうち東証株価指数(TOPIX)に採用されていないのは、千代健とFDKの2銘柄だけだ。グロース市場の銘柄は選定されていない。

 新指数に選定された銘柄の株価の動きはどうか。3月30日の東証の取引時間中にGPIFのニュースが伝わったため、前日の3月29日終値を起点とし、3月期決算の発表が本格化する前の4月22日の終値、決算発表が一巡し、その結果をある程度織り込んだとみられる5月17日の終値を比較した。

 4月22日の全構成銘柄の株価を3月29日と比べたところ、値上がり数が75、値下がり数は416、同じ価格は2銘柄だった。この間にTOPIXは4.3%下落している。TOPIXと個々の騰落率を比べると、TOPIXを上回ったのが232銘柄、下回ったのは261銘柄だった。

 一方、5月17日と3月29日の株価を比べたところ、値上がり銘柄数が115、値下がり銘柄数は378だった。この間にTOPIXは6.3%下落している。TOPIXと個々の騰落率を比べると、上回ったのが257銘柄、下回ったのは236銘柄だった。

 この期間はウクライナ情勢をはじめ、米金利や円相場など株式市場を取り巻く様々な材料があった。加えて、株価には個別企業の収益力、投資指標の評価など様々な要因が影響する。全体的にみると、各セクターの中で相対的にESG対応に優れた企業として選ばれたとしても、短期的に個々の株価の支援材料に働いたかどうかわからない。

 ただ、ESG課題に関する取り組みが中長期的な企業価値の向上につながるとみられている。GPIFが採用した指数に選ばれた企業にとってはESG経営を一段と推進するインセンティブに働く公算がある。適時開示が相次いだのはその証左と言えるのではないか。今後、機関投資家によるESG指数に基づく運用資産がさらに拡大する可能性もある。個々の指数の特徴を理解し、それぞれ選定された銘柄の動向に注目する意味があるだろう。


QUICKリサーチ本部プリンシパル ESG研究所エディター 遠藤大義